MICE(マイス)とは英語の略語で、Meeting(会議)、Incentive Tours(奨励ツアー旅行)、Convention(コンベンション)、Exposition(展覧会・博覧会)の頭文字をとった人造語である。個人の旅行客というよりも、国際会議や展覧会、博覧会あるいはビジネス・エクスポジション等に参加するビジネス客、あるいはビジネス関連のツアー旅行等に参加する顧客・観光客等を一体の顧客として把握し、これらの人達が宿泊し、仕事をし、買い物し、食事をし、かつ遊ぶことのできる諸施設を一群の施設として提供できる機能や施設のあり方を意味している。
国際的レベルでのコンベンションや博覧会・展覧会は、数千人あるいは万単位のビジネス客や訪問客が、複数日にわたり、同じ場所に滞在し、一定の催し事に参画することを前提とする。このためには、巨大なコンベンション施設やホテル群などの施設が存在し、顧客を支える多様なサービスやアメニテイーなどを顧客に提供できることがコンベンションを開催できる条件となる。昼も夜も滞在中顧客が楽しめるように多様なサービスを提供できることが、巨大なコンベンション誘致を実現する。また、かかるコンベンション顧客等は通常消費単価の高いビジネス客が中心でもあり、多様なアメニテイーや楽しみを提供することにより、消費のシナジー効果を期待できる。様々な楽しみが存在し、初めてコンベンション顧客自身も満足するという現実もある。エンターテイメントやカジノ等の遊興施設をこれらビジネス旅客やコンベンション旅客と融合するコンセプトがMICEでもあり、新しい施設・機能概念として、ラスベガス、マカオで志向され、2011年にはシンガポールでも実現した。
一万人以上のコンベンションや展覧会・博覧会を実現できるコンベンション施設があること、これら顧客を集中的に宿泊させることのできる宿泊施設、飲食施設、またアフター・コンベンションを考慮した、カジノ、エンターテイメント、ショーなどをふんだんに要素として具備していることが、顧客を惹きつけることができる。またこれが、巨大コンベンション誘致に繋がる。勿論このためには、本来、外国からの飛行機を受けいれることのできる飛行場が近接してあること、また飛行場などへの交通のアクセスや利便性が良いこと、関連インフラがしっかり整備されていることなども前提条件になる。同様にこれらコンベンション施設や劇場・アリーナ等は様々な大イベントを招致することにも用いられる。集客の要素を如何に保持しているか、かつ大量集客を伴うコンベンションやイベントを開催できる能力を保持し、またこれら顧客に最大の満足度を与えられるか否かがポイントになっているともいえる。MICEはビジネス、観光と滞在、遊びが一体化したコンセプトでもあり、このエンジンにゲーミング・カジノ施設を位置づけるという考えをとる。尚、残念ながら、我が国にはカジノ外のこれら施設の要素は全てある(コンベンション施設、ホテル、飲食施設、ショッピングモールなど)が、例えば1万人を超える国際会議やホテルを集中して実現できる場所は一切ない。投資が都道府県単位ごとに分散し、集客力が弱い、あるいは国際的競争力の弱い施設展開になってしまっている。ここには選択と集中という発想は無い。機能を複合化させ、統合力やシナジーを発揮させるという発想も無い。
ところで、コンベンション客を誘致し、コンベンション客に様々な消費をさせるという考えはもともとラスベガスにおいて、季節毎の地域への観光客の入りをできる限り平準化するために、観光シーズン外にホテルの空き室を埋め、顧客に消費させ、遊ばせるという考え方から生まれている。かかる事情により、巨大なコンベンション施設を作り、他の地域にはない、巨大ホテル施設群を備えるとともに、会議だけではなく、アフター・コンベンションやナイトライフ、ショッピング等を楽しめる施設や仕組み、工夫を備えることが、コンベンション誘致に繋がったともいえる。また、これがカジノの消費効果を高めたと共に、カジノ外の支出効果をも高め、お互いが消費のシナジーをもたらしたことになる。数千人や一万人以上の単位の人間が集まるコンベンションやエキスポジション、イベントは生半可な施設では対応できない。イベントや会議自体が大きな集会となる場合には、消費効果も大きいが、秩序維持や様々な治安上の問題も起こりかねない。但し、優良な顧客を集客することができれば、例え顧客数が多くとも、ゲーミング・カジノそのものの運営には大きな問題をもたらさず、逆にプラスのシナジーがあると考えるべきであろう。