2011年末の連邦司法省による有線法の限定的解釈(有線法の対象規定はスポーツ・ブッキングのみとする司法省見解)によりインターネットを用いた州際間ロッテリーを含むロッテリー・チケットの販売は、有線法に抵触しないということが明らかになった。一方、もし、有線法の規定がスポーツ・ブッキングのみであるならば、インターネットを利用したテクサス・ホールデム・ポーカーはスポーツ・ブッキングではないわけだから、当然連邦規制となる有線法の規定の対象外となる。そうであるならば論理的に2008年のUIGEA(違法インターネット賭博執行法)に触れることはないとする議論が2011年末より現在まで継続して行われつつある。連邦法上違法であるとする根拠が無いならば、賭博行為は本来州政府に法律の管轄権がある以上、州法によりこれを認めればいいだけのこととする論理でもある。この判断に依拠し、米国の一部の州政府あるいは州議会等は、インターネット・ポーカーを制度的に州法で認める法案の検討と議会上程を考慮する事態に至っている。
ややこしいのはこのインターネット・ポーカーとは、その内容も、ゲームの提供の在り方も通常のカジノのゲームとはちょっと異なる特性を持っていることにある。テクサス・ホールデム・ポーカーとは、プレイヤー毎に配られる2枚の手札と、コミュニティ・カードと呼ばれる全プレイヤー共通のカード(最大5枚)を組み合わせてプレーするポーカーの一種で、僥倖に頼るゲームではなく、戦略もスキルも駆け引きも必要な参加型スキルゲームに近い。通常の胴元と顧客が対峙するバンキング・ゲームとは異なり、あくまでもプレイヤー同志のゲームであり、胴元は場を提供するだけが基本となる。リアル・ゲームでは、トーナメント(勝ち抜き戦)として行われることが多く、この場合の胴元の利益はショバ代か入場料になる。より一般的なのは参加者にとっての費用はBuy In(ないしはPot) + 入場料(Entry Fee)で表示され、前者が所謂賞金プールとなり、後者が開催者の費用と利益・税になる。リアル・ゲームも世界的な人気があるテクサス・ホールデム・ポーカーだが、実はインターネットでも爆発的な人気がある。インターネットの場合にも、リアル・ゲームと同様のトーナメント(一旦参加すると、負けるまで退出できない)とキャッシュ・ポーカー(現金を賭けすてにするため、退出が自由となる)があり、後者の場合には、賭け金の一定率、あるいは勝者勝ち分の一定率が開催者の費用・利益、税として控除される。インターネットの世界では、その簡便性より、キャッシュ・ポーカーが圧倒的に多い。実際のゲームは一種のインターネットを通じた参加型ゲームと思えばよく、一つのサイトに無数の「場」が開かれ、任意で空いている場に参加できる。スタートは1~3セントくらいから、大きくても25セント程度までとなるが、無料の練習学校などもサイトに付随し、慣れるまで一定金額までは無料、この同じサイトからリアル・ゲームの世界大会を観戦できるなど、至れり尽くせりのサービスがあり、実際の顧客が無数の場に参加し、ゲームをしている様子が常にわかる。これは、実はかなり面白い。又見ているだけで、ゲームの戦略を概略勉強できる。ネットを通じた顧客同士が参加するゲームのあり方は、新たなゲームの楽しさを提供しており、革命的な新たな遊びのジャンルに成長しつつある。(外国からサイバー世界に向けて発出される)インターネット・ポーカーの顧客と市場は年々拡大しており、違法か合法かが必ずしも明確に定義されていない分野が急速に大きくなりつつある。このネットによるテクサス・ホールデム・-ポーカーに対する需要には根強いものがあり、最早無視できない市場規模に発展している。Moody’sによるとこのネットだけの市場規模で年40億米㌦から60億米㌦に達するという。
米国でも連邦議会や様々な州議会において、インターネットを用いた参加型のスキルゲームともいえるテクサス・ホールデム・ポーカーのみは例外的に制度として認めるべきとする声は強い。様々な制度的障害にもかかわらず、諸外国から米国人顧客を対象にした(違法)ネット・ポーカー・サイトは無数に現存し、これには米国人の根強い支持と参加がある。これが現実であるとすれば、何等かの形で制度的認知を図り、規制の対象にすべしという声が生じることも当然であろう。この結果、何と米国の一部の州政府ないし議会はインターネットによるポーカーゲームを認める法案を提出しようとする動きがある。2008年のUIGEA(違法インターネット賭博執行法)に基づき、インターネット賭博に関する金融取引は法律上禁止されているのだが、インターネット・ポーカーは僥倖ではないスキルのゲームという建前で、連邦法にチャレンジする考えと想定される。但し、連邦政府司法省は、くだんの有線法の解釈規定の中で、インターネット賭博とUIGEAとの関係を明示的に説明していない。連邦政府が如何なる判断をし、如何なる行動をするかは、まだ明らかではないと判断すべきなのだろう。