ミシガン州におけるカジノ課税の体系は下記になる。対象施設は3ヶ所のみであり、一定の地域独占性が民間事業者に制度的に付与されているために、相対的に高い税率となる。基本的な考えは、税収は州政府(ミシガン州)と施行地点にあるホスト市(デトロイト市)との間で配分し、その使途が法律上明記されている特別目的税になる。尚、市の取り分は、州の取り分より大きい点も特色のひとつであろう。
① 賭け事税(Wagering Tax):
総粗収益に対し19%の固定率で課税され、内8.1%が州政府(全体の45%)、10.9%(全体の55%)が市の取り分となる。州政府取り分は財務省に設置される州政府学校支援基金に預託され、教育用予算に充当される。市取り分は、警察官の雇用・教育・配置、雇用増を目的としたダウン・タウン再開発、医療、防災、街燈等の公共安全への投資、若年層支援、市民生活向上、一部市税の減免、道路補修等に支出される。事業者からの納税は毎日送金による。市は州に徴収を代行させるか、自ら直接徴収するかを選択できるが、代行する場合は、州から市への配分も毎日送金により実施される。2011年の総賭け事税は3.6億㌦、内、州の8.1%取り分は1.15億㌦に達する。
② 追加賭け事税(Additional Wagering Tax):当初のみで現状は廃止
ミシガン州の法律は当初暫定施設による運営を認め、一定期間後恒久施設を建設し、これに代替するという二段階による施設実現を認めていた。暫定施設による運営段階は税率が低いが、事業者による恒久施設ができた場合、上記①に加え、総粗収益の6%を追加徴収するという考えでもあった。全額財務省内に設置される州カジノ・ゲーミング基金に預託され、1/3が市に(使途は上記と同じ)、7/12が州の一般財源に、1/12がミシガン州農業馬産業開発基金に充当される。尚、この追加税は、競馬売り上げ・税収減少に基づく、追加財源措置でもあり、既存のロッテリー関連法案が改正され、州内競馬場でビデオ・ロッテリー・ターミナル(VLT)が運営できるようになった段階で廃止された。尚、カジノ施設は、代替措置として、別途州政府機関でもある競技委員会より許諾を得て、競馬のサイマルキャスト賭博を実施できるとされた(但し、この売上に伴う課税等は競馬法に基づくと共に、その管理・監視は競技委員会ではなくMGCBが担うとされた。尚、2009年に競技委員会はMGCBに統合されている)。
③ 州サービス料(State Service Fee):
一種の規制執行費用賦課金ともいうべき賦課金になり、州が担う規制、法の執行の為の全ての費用、賭博依存症対応策費用、カジノ関連施策と活動、関連する法務活動、州警察が負担する費用をこのサービス料で賄うことになる。カジノ開設初年度分の費用は2,500万㌦となり、関連カジノ施設がこれを分担。以後、この金額は毎年前年のデトロイト市消費者物価指数により調整されるものとし、施行事業者3社により均等分割され、支払われる。支払われた金額のうち200万㌦は州ゲーミング依存症防止基金に預託される。残りは、財務省に設置される「州サービス料金基金」に預託され、この目的のために支出され、一般会計には充当しない。またゲーミング依存症防止基金への支払い後の基金残額の上限は6,500万㌦とし、これを超えた場合は、3社に均等に負担額を減殺する形で返却する。
④ 市サービス料(Municipal Service Fee):
デトロイト市は上記に加え、カジノをホストする費用として、独自に各施行者に対し、総粗収益の1.25%ないしは400万㌦いずれか大きい金額を年毎に市サービス料として徴収できる。カジノ開設日に前払いされ、以後毎年開設記念日後20日以内に市の一般会計にこれを支払う(尚当該税は州が代行して、徴収することもできる)。
⑤ 申請料、ライセンス料(License Fee)、罰金等:
事業者によるライセンスの為の申請料、調査等実費、ライセンス料等は事業者により別途支払われる。事業者の場合、申請時に5万㌦、承認時に2.5万㌦を徴収される。以後毎年更新時も同等となる。これら資金は、上述した「州サービス料金基金」に預託される。
上記以外に、州政府その他の公的主体が事業者に対し、物品税(Excise Tax)、ライセンス税(License Tax),特権税(Privilege Tax)ないしは職業税(Occupational Tax)を賦課することはない。尚、制度を構築し、実際に税収が入るまでの期間は、一般会計から500万㌦の予算が割り当てられ、これら支出は、開業前の段階で3事業者に均等分担する形で負担させている。規制機関及び法の執行機関の全ての費用は、上記で述べたとおり、事業者より徴収する州サービス料金並びにライセンス料、あるいは罰金等がその原資となっている。
尚、ミシガン州は12の先住民部族と19の協定(Compacts)を締結、23のカジノ施設がある。州政府は部族カジノの規制はしていないが部族との契約に基づきこれらを監視する義務があり、MGCBがこれを担うと共に、電子機械ゲームの総粗収益の8%を州政府に、2%を関連する地方政府に納付することになっている(2011年レベルで8%税は4.21億㌦、2%税は2.89億㌦に達しており、無視できない規模の税収になっている)。