では、台湾における制度の内容は如何なるものになるのであろうか。2011年春レベルで公表された法案の要点は下記にある(法案を二つに分けることにより、一部は当然修正されていると想定するが、大枠に変更は無いものと推定する)。
① 行政院傘下に独立した国の規制機関(Authority)を設け、カジノ施行に関する全ての詳細規則策定、許認可、監視・監督・検査等を委ねる。
② 統合型リゾートのあるべき標準、実現手順等要綱は交通部・観光局が行政院の認可を得てこれを定める。
③ カジノの開発・運営を担う民間事業者の選定は、規制機関が公募にて候補を募り、その適格性・能力を審査し、行政院の認可を得て、規制機関が民間事業者を選定する。当該特別観光区における事業者の投資計画は交通部・観光局がこれを評価し、別途認可の対象とする(即ち、二つの異なる認可を必要とし、事業者としての適格性の審査を受けると共に、事業者による事業計画・投資概容も評価と審査の対象となる)。
④ 二つの認可とは、「カジノ施設設置許可(Casino Establishment Permit)」と「カジノ・ライセンス(Casino License)」になる。前者は事業者の適格性・能力・提案の実効性を審査し、施設の設置を許可するもので、有効期間は5年である。この期間内に投資を実行し、施設を完成することが義務づけられ、正当な理由がある場合、1年間の延長が可能となる。施設が完工しない場合、許可は剥奪される。施設ができた段階で規制機関より完工証明を取得する必要がある。この段階で全体投資計画の50%以上の投資を実行していることを条件とし、初めて規制機関に対し、カジノ・ライセンス申請をすることができる。その際、詳細事業計画書・施設設置・運営計画書等の提出、申請費用の支払い等が申請要件となり、行政院、規制機関の認可を得て、履行保証状を提出することにより、ライセンスが付与される。ライセンスの有効期限は30年で更新可能である。
⑤ 事業者の最低払込資本金規定、カジノ場に関する詳細規定(ゲーミング・フロアー、機械・テーブル最大設置数、最低ホテル部屋数)等は別途規制機関がこれを定める。
⑥ 国税として年運営粗収益の20%以下の率で観光・ゲーミング許諾料(Tourism Gaming Franchise Feeとして徴収(一部収益は離島開発基金に充当)し、地方税として年運営粗収益の7%以下で地方議会が定め、行政院財務部に報告する率にて特別ゲーミング税(Special Gaming Tax)が徴収される。その他規制機関の費用分担として年毎にゲーミングライセンス料(Gaming License Fee)が徴収される。
法案としてまた確定していないが、2013年4月に行政院が開示した情報によると最終的には上記は粗収益に対する13%課税となる模様で、5%を中央政府、7%を地方政府、依存症対策費として0.5%、その他の福祉財源として0.5%という仕分けになるとのことである。他の税が課されないことを前提にする場合、これはかなり競争的な税率になる。
⑦ 規制機関の権能・権限は広く、関連経営者、従業員等の認可付与、事業者の全ての外部契約の認証権、査察官の配置と広範囲な査察・検査権限、主要株主変更認証権等は欧米並みの規定となっている。
⑧ 台湾人に対する与信は禁止となる。一方、外国人・高額賭金顧客は、勘定を設け、与信を付与することが可能で、この場合賭博に係る負債は台湾法で強制執行可能とする(但し、金利は5%以内とする)。
⑨ 行政院/保健部内に、「賭博依存症防止センター」(Problem Gambling Addiction Prevention Center)を新たに設け、賭博依存症対策への対応にあたる。
規制の内容はかなりしっかりしたものとなるが、規制機関と他の関連しうる行政機関の許認可や規制等との関係はまだ不明確で、詳細細則を詰めるのは今後の課題でもあろう。かつ、未だ不案内な側面も多く、制度自体が本当に実効性のある仕組みといえるか否かについても、今後の検証が必要である。
制度上の枠組みが2013年前半には確実に固まることにより、行政院は2013年後半には規制機関を創設し、直ちにマツ島における統合型リゾート事業者選定手続きに入ると想定されている。