インドでは1867年連邦「公共賭博法」(Public Gambling Act)により原則賭博行為は禁止とされ、2000年の「情報技術法」(Information Technology Act)においてもインターネット賭博は禁止されている。例外としてロッテリー、ベッテイング及び競馬は、別途特別立法措置により限定的に認められ、一部州で提供されているのが実態となる。但し、現実的には様々な形での違法賭博が横行している模様でもあり、スポーツ・ベッテイングやカード・ゲーム等は大都市では非合法裏に行われ一般化しているとされ、平均的インド人の賭博志向はかなり高いといわれている。
インドで唯一例外的に非居住民を対象とした賭博が地域的に、州法として認められたのは1999年にゴア州、その後2009年にシッキム州のみとなる。現状、シッキム州には2ヶ所、ゴア州ではマンドビ川を利用した6つのリバー―ボートカジノと共に、専ら5つ星ホテルに併設された12の小規模カジノ施設が存在する。内、ゴア州では、観光振興という前提がその政策目的となるが、ゴア州における根拠法は「改定ゴア賭博(防止・規制)法」(Goa Gambling (Prevention & Regulation) Amendment Act)になる。同法に基づき、Trading Licenseを取得すればカジノ運営が可能となる仕組みである。カジノ施設総数は規制されているが、事業者や運営の在り方を何等かの形で規制しているわけではなく、規制機関も存在せず、法の執行主体も実質的には特段の規制や監視を担っていないという状態にある。河川のリバーボートの場合、入場者からは500ルピー/人の入場料を徴収していると共に、州政府の主たる税収は、年あたりのライセンス料(6.5 Crore/year)である。
ゴア州では、この様に、実質的には無秩序のまま、賭博行為が放置され、マネー・ロンダリングや違法行為の温床になっているという噂もある。2010年以降、新たに包括的なカジノ規制法を設け、委員会方式による規制機関を設置し、事業者のライセンス、運営行為の規制に強く州政府が関与すべきという議論がなされているが、未だ実現していない。21才未満は入所禁止、ゴア居住民は入場禁止が前提となるが、後者を禁止することに関しては異論もあり、今後の議論の対象となる模様である。もっとも連邦法では厳格に禁止の対象となっている以上、単純な形で、ゴア州のみが対象外になることの整合性がつくのかに関しては懸念もある。また、制度的にはオンライン賭博は禁止されているとはいえ、現実的には多くの庶民はオンラインによる賭博に参加し、制度自体が有名無実化している模様である。
インドは解放経済政策の下に、毎年確実に経済成長を成し遂げていると共に、国も国民も世界経済の中に組み込まれつつあり、様々な交流も加速化している。
この結果、
① 国民の中における富裕層の拡大に伴い、エンターテイメントに対する需要も段階的に高まりつつある。これに伴い国民が賭博行為等に触れる機会も増え、非合法賭博の事例も散見されるようになっている。
② 一部富裕層は外国におけるエンターテイメント・カジノでの消費に参画しつつあり、富が外国に遺漏しつつある。連邦政府・その他の州でも制度を変え、カジノを導入すべきとする議論はあるが、宗教的な反発等もあり、本格的な議論にはなっていない。
尚、南アジアでは、上記のほか、スリランカにても1997年にカジノが導入され、10年間運営されたが、政治的な理由で閉鎖され、その後再開されて、現状4つのカジノ施設が存在する。もっとも現地住民や華僑が主要顧客で、入場料もなく、スロット・マシーンもない。課税は月ごとの総粗収益に対し5%、年総粗収益に対し10%となるが、明確な制度が無いままに、カジノが存在しているわけで、新たな立法組織により、これらの位置づけをはっきりすべしという声も強い。尚、このほか、ネパールでも、規模の小さい外国人専用カジノが10ヶ所存在するが、政府に対しロヤルテイー2000万ルピーの支払いが要求されるだけで、何等かの規制がなされているわけではない。同国観光・空港省は、より緊密にモニターするために、新たな規制と制度を設けるべしと主張しているが、実現していない。