2012年末の衆議院総選挙、再度の政権交代は、超党派議員連盟の動きを停滞化させた。再度自民党へと政権が交替したため、選挙後の与党による政治体制の方向が固まり、安定するまで一定の時間がかかったと共に、政策優先度が低い案件の検討は後回しにされたからである。かつ、選挙前の超党派議員連盟の幹部の1/3は落選、別の党に移籍した幹部、選挙後政府や党の役職に就く幹部も多く、そもそも議員の顔ぶれが大幅に変わったため、超党派議員連盟が機能しなくなっていた。新たな議員も増えた為、超党派議員連盟を再組成せざるを得ないという事情もあったことも事実である。最も超党派議連幹部の顧問・幹部等が政府閣僚や与野党の幹部になったため、推進に向けての体制はそれだけ強化されたことになる。新たな超党派議員連盟は、より強力な枠組みとすべく、与党幹部間で慎重な幹部人選が行われ、これに何と約4ヶ月という期間を要した。数回の与野党世話人会議を経て、新たな超党派議員連盟を再構成できたのは2012年4月24日の総会となった(選挙前の議連参加者は144名、今回は138名となったが、賛成を表明しながら、リストに事務手続き上掲載されていない議員も存在し、実際は増えることが想定されている)。選出された新たな議連の幹部のうち、会長は元官房長官細谷博之議員(自・衆)、幹事長は岩屋毅議員(自・衆)、事務局長は萩生田光一議員(自・衆)となり、最高顧問、顧問、副会長に与野党幹部を配する等強力な布陣が考慮された。会長の指名は、官邸の意向による。
上記に至る政権与党である自民党の基本的考え方は下記にあった。
①過去超党派議連の枠組みで議論してきた法案、手法の基本的枠組みは変えない。一部修正はあり得ても、再度ゼロから議論する意味はない(例えば、修正すべき点としては、カジノがもたらす国にとっての交付金の使途を当面の間震災復興に充当する旨の規定は、2年前の震災直後の話であり、別途復興資金の手当てがついている以上削除すべきという意見がある。より政策的にアピール度のある使途を考慮すべきだが、後刻検討すればよいという議員の考え方になる)。
②推進法案は、与野党が協調・協力し、超党派議連として実現を推進することを基本とする。一方、超党派議連自体は、選挙に伴い議員構成が大きく変わったため、実質的には再度募集をかけ、再構成する必要がある。
③与党自民党が主導権を取り、議連の幹部を構成し、纏めていくことが肝要となる。一方、野党と協調し、かつ今後の政府との協力や折衝を考慮した場合、議連としても強いリーダーシップが無ければ、到底国会での議論を乗り越えられないことより、議連会長は与党の党三役経験者とし、与野党の幹部を顧問や議連幹部に取り入れ、強力な布陣の議員連盟とする。
④一方、夏の参議院選を控え、国会会期の延長はできないことから、通常国会において新たな法案審議の時間的余裕は無い。方向としては、通常国会会期中に議連を再構成し、法案成文を確定し、各党内部調整を経て、選挙後、秋からの臨時国会において推進法の可決を図る。
⑤またIRカジノの認知を高め、国の政策に取り入れ、政府を巻き込むために、議論中の成長戦略の中の一つアジェンダとしてIRの推進・実現を入れ、政府内部にこの施策を浸透させ、位置づけさせることを考える。
一方3月8日の衆議院予算委員会において、安部総理は生活の党鈴木克昌議員の質問に答え、カジノの導入に関し、議連を中心に検討がなされていることを承知し、課題もあるがメリットも十分あることから、よく議論し、進めていくことに関し、前向きの発言をしている。また、成長戦略を議論する産業競争力会議(2012年4月17日竹中委員提出ペーパー)でも、「カジノ・コンベンションの推進」として、IR(統合型リゾート)市場の形成に向け、積極的取組を開始している自治体、民間と連携した推進体制を構築し、「統合型リゾート整備促進法(仮称)」の制定に向けて、内閣官房に担当部署を設置、関係省庁と連携した検討体制を整備することを提言している。方向性としては、政府の成長戦略の中で、IR実現・推進を明確に政府方針として打ち出すことを想定し、段階的な詰めと政府内部でのIRの認知を図ったわけである。6月11日に開催された閣僚会議である観光立国推進会議の「観光立国推進実現に向けたアクションプログラム」の中では、「4国際会議等(MICE)の誘致や投資の促進」の一項目として、IRの項目が設けられ、「IR推進法案の制定の前提となる犯罪防止・治安維持・青少年の健全育成・依存症防止などの観点から問題を生じさせないために必要な制度需要の措置の検討を関係府省庁において進める」旨が規定されたが、6月14日閣議決定された「日本再興戦略」の中ではMICE誘致体制の構築・強化は触れられたが、IRについての付記は当初考慮されていたのだが削除された。選挙前の時点で、野党やマスコミの争点になりかねない項目は削除したいという政治的思惑があったと共に、この段階で閣議決定の対象とするにはタイミングが悪いという判断となる模様である。結果、IRを成長戦略に位置づけるのは秋以降、第二弾の成長戦略になる予定となった。また、会期末までに再度議員連盟総会を開き、成長戦略への位置づけを踏まえて、より積極的な次のステップを踏むことが考慮されていたが、全てダメになり、与党・政府内部では、若干のトーンダウンになったことは事実でもあろう。