21世紀の大きな特徴は、ICTの飛躍的な技術的発展とその日常生活への広範囲な適用にある。今や生活のあらゆるレベルにおいて、コンピューターやインターネットは切っても切れない存在になりつつある。これは遊びの世界でも同様である。例えば賭け事は、有史以来本来人間対人間の営みでもあったのだが、19世紀におけるスロット・マシーンの発明は、これを人間対機械の営みに変化させ、これが電子化され、人間対コンピューターの営みに変えてしまった。かつ複数の電子機械が連結してネットワークを構成するゲームの在り方や、インターネットの登場に伴い、一つのサーバーが数千の電子機械端末を管理するようなゲームの在り方も登場してきている。これら電子化、インターネット化の動きは、管理や監視の在り方を変えつつあると共に、これに伴い規制や制度の在り方をも大きく変えつつあることが現代社会の特徴になる。
即ち、技術の進歩は下記をもたらしている。
① 不正・いかさまの効果的防止:
電子式機械ゲームの発展は、かかる機械の偽造、機械を用いたいかさま、不正等を限りなく、少なくしている。電子式機械自体が外からは操作できにくいブラックボックス化していると共に、サーバー管理型の場合には、顧客の遊ぶ機械は単なる端末機械でしか過ぎなくなる。かつ、機械と人間とのインターフェースをできる限り少なくし、物理的に職員が機械との間で現金をハンドルすることを限りなく排除することにより、不正やスキミングを排除することができる。これにより、管理手順は変わることになり、関連する規制も簡素化することができる。
② 取引記録の可視化と透明化:
電子式機械ゲームは、個別の取引データ、賭け金、勝ち金を全て記録できることになり、複数機械を連結し、管理したりする場合は、場内でも管理が簡素化すると共に、これをバッチないしはオンラインで規制当局が把握することにより、売上高の正確な捕捉と内部不正を完璧に防止できる仕組みが可能になる。事業者のシステムに規制機関がオンラインでアクセスすることにより、両者による情報の共有が可能となり、ごまかしは一切できなくなる。規制機関が事業者と同様に先端技術やシステムを共有することにより、規制や監視がより効果的になるわけである。
③ ツールの電子化がもたらす効果的な監視の仕組み:
ゲームに使用されるチップにはRFIDを組み込むケースが多くなってきている。チップの個体認識をテーブルでチップに接触せずに把握できる以上、偽造したチップを使うことは不可能に近くなる。チップの偽造を抑止する効果的な手法になるが、その他これを様々なセキュリテイー―や不正防止に使う応用手法が開発されつつあるのが現実である。
この様に、技術の発展は、不正やいかさま、偽造等を効果的に防止したり、抑止したりする新たな手法やツールをもたらしつつある。ゲームの進行や遊び方にシステムや技術が導入されればされる程、限りなく効果的に監視できる手段が生まれることになり、技術の進展は、ゲーム自体を健全化することに繋がるとも言える。
新たに制度を構築する場合には、例え一定の技術を前提に制度や規制を定めても、現実の技術の進展スピードに制度や規制の在り方が追い付いていけない状況が生まれてしまうことを認識する必要がある。遊びのツールは不断に進化しうるし、この技術の進化を否定すべきではない。よって、基本的な考え方として、下記を考慮すべきであろう。
即ち、
① ゲームの内容や提供の在り方、あるいはゲームに使用する機械式・電子機ゲーム等の機材、関連するツールや器具等に関しては、新しい考え方、新しい製品や技術の導入に柔軟であるべきで、これを前提に法令や規則を構築すべきである(市場における自由な技術の進展や発展を規制が阻害すべきではない)。
② またこの為に、技術の評価を規制機関ができるような人材と体制を整えることが必要でもあり、常に、経済実態に合わせた規制や監視の考え方が試みられるべきである。現実は制度より早く進歩するのが通例で、実態に合わせて制度をも柔軟に変えていく姿勢こそが必要である。
③ 規制や監視に関するシステムやツールは世界最新の技術が採用されるべきことを基本とし、費用を負担する民間事業者や規制機関にかかる努力義務を促すべきであろう。