教科書的には、あるゲームが賭博といえるか否かは、そのゲームの特性に着目し、そのゲームが技量(スキル)か、僥倖(チャンス)か、どちらに大きく依存しているか次第で、賭博行為か否かを決める一つの判断基準にすることが諸外国では採用されている。いうまでもなく、賭博とは原則僥倖に依存するゲームになる。参加者にとり、平等に勝てる可能性が無ければ、誰も参加しなくなってしまうからである。一方、ややこしいのは、ゲームに勝つためには一定の技量(スキル)を必要とするゲームもあれば、全くスキルを必要としないものもある。またこの二つが同時に存在しなければうまく勝てないというゲームもある。勝つためにはスキルが絶対必要となるゲームでは、相手よりスキルが上でなければ、勝てるわけがない。やっても負けることは確実になってしまう。
一方、技量(スキル)を必要としない僥倖(チャンス)に依存するゲームは、例えスキルが無くとも勝つ場合が同等にあることを前提とする。従前に述べた通り、スキルを競う、あるいはスキルに依存するゲームそのものを賭博にすることは基本的には無理がある。スキル、即ち能力と経験がある方が確実に強いわけで、相対峙した場合、当事者間にスキルの差があれば、そもそも勝負にならないからでもある。例えば囲碁、将棋、マージャン等のゲームでは、知識、経験、能力などが一体となったスキルがなければ、素人はプロにまず勝てるわけがない。この場合、賭博行為をするのは、ゲームに参加する当事者ではなく、外部からこれを見る第三者であって、第三者同志が競技を見て、どちらが勝つか負けるかを想定し、賭けるとことしかない。アマ、プロに拘わらず、スポーツは本質的にはスキルのゲームになる。スポーツに賭け事が関与することは好ましくないとする考えがあるが、これはもしスポーツをする当事者がこれらに関与したとすれば、公平、健全なスポーツとはなりにくいからである。もっとも面白いことに、逆に外からその帰結を賭けるという意味では、スポーツ程、第三者が賭け事をすることにフィットする仕組みは他にはない。この意味では、スポーツは賭け事との相性が良く、スポーツ・ベッテイング(スポーツを対象とする賭け事)は世界的には極めて人気の高い賭博種になる。
僥倖(チャンス)に依存するゲームとは、勝つか負けるかは基本的には運や確率次第となり、ゲームに参加する誰でもが公平に、同じポジションにある賭博の在り方になるといえる。スロット・マシーンやルーレットによもやスキルがあると考える人はおるまい。スキルというよりもルーレット等では単なる確率と僥倖しか考える要素は無いのだから、お金の賭け方に工夫が必要な場合が多い(確率が高い賭け方に徹すれば、それだけ勝つ確率が多くなり、長い時間遊べることになる。但し、配当は当然少ない)。ややこしいのは、スキルかチャンスか、どちらがより大きな要素を占めているか判定に困る類のゲームが世の中には結構存在することにある。例えば卑近な例でいえば、遊技のパチスロはスキルのゲームなのか、あるいはチャンスのゲームなのかという課題がある。ものの本、攻略本によると、動態視力とか、押し込んで止めるとか、いかにもスキルであることが記載されているが、表面的には、誰が押しても僥倖のようにしか思えない。ブラックジャックなどのテーブル・ゲームはどうであろうか。配られたカードの中で如何なる選択肢を取るかは一定の定石みたいな考えがあり、これを守っていれば、勝つ確率は確実に向上するのだが、これは完璧なスキルとは言えない。これを知っていれば、確かに損する確率は減るが、必ず勝つことができるというわけではない。なんとなれば次に来るカードがどうなるかは、必ずしも読み取ることはできないからである。この様に、一定のスキルや知識は必要だが、僥倖も重要になるゲームは、ゲーム性が高く、単純な僥倖のみのゲームよりも人気が高い。このほか、技量(スキル)と共に全体を見る戦略が絶対要件となり、これに僥倖が加わるテクサス・ホールデム・ポーカー等も、あきらかに技量が無ければ勝てないのだが、僥倖という要素もあり、極めて人気の高いゲームとなっている。
ゲームは何人に対しても、公平でなくてはならないし、公平であるからこそ、賭博行為の対象になる。スキルの優劣が勝敗を決めるゲームの場合、ゲームとしては面白いが、これ自体を賭博の対象とすることは、難しい場合が多い。例えばスキルのゲームである麻雀は、身内で賭ける場合は良いが、商業的な賭博行為には馴染まない(もっとも、麻雀やポーカーは基本的にはプレーヤー同志での賭博行為にすぎず、ハウスが徴収できるのは所場代でしかなく、ハウスにとってはメリットは少ないという事情もある)。ゲームとは①基本は僥倖がベースとなるべきこと、②但し、僥倖だけのゲームもあれば、僥倖と共に一定の技量(スキル)や戦略が関与することにより勝つ確率が高まる遊びもあり、これが最も面白いゲームとなること、③顧客が楽しめること、面白いこと(一定時間に亘り、確実に遊べること)がその基本となるべきなのであろう。