ゲーミング・カジノとは伝統的にはテーブルやルーレット等の器具を用い、デイーラーと相対峙しながら、顧客が賭けをするという対人ゲームが主体でもあった。一方人間ではなく、機械が顧客と相対峙し、機械が自動的にあたりを決め、自動的にペイアウトがなされる機械式スロット・マシーンが米国で発明されたのは1887年になる。賭博行為へのアクセスを飛躍的に向上させ、誰もが簡易に賭博行為を楽しめるこの機械は大人気を呼ぶに至り、瞬く間に発展、流行し、第二次世界大戦後になり、米国から欧州をはじめ様々な国々に伝播し、現在に至っている。情報電子技術の革命やコンピューターの発展により、現状では殆どのスロット・マシーンが電子式になり、乱数発生器(RAG)により一定の確率に基づき当たりが決まる電子式機械ゲームになってしまっている。現代社会では、既に殆どの機械に物理的なリール等は無く、全てがモニター上の映像となっており、ビデオ・マシーンとも呼称したりする。この結果、カジノとは、デイーラーという人が介在するテーブル・ゲームと一切人を介在させないスロット・マシーンやビデオ・マシーン等の電子式機械ゲームという二つの極端にあるゲーム種両方を併設する施設として発展してきている。かつ、技術の発展により、電子式機械ゲームの種類とパターンは年々増加しつつある。
この様に、カジノとは人間対人間と人間対機械という誠に対象的な取り合わせの遊びの組み合わせとして構成されている。一方ここ数年、コンピューターや情報電子技術の更なる発展に伴い、この遊びや賭博の世界にあっても、機械と人間の境目が限りなく、無くなる事象が生じてきている。この結果、様々な類型の新しい賭博の在り方が生まれてきた。例えば、ルーレットは、デイーラーと顧客という人間同士が器具を用いて営むゲームだが、この周辺に幾多の電子端末機器を設置し、実際に人間が遊んでいるルーレットと電子端末をリンクさせ、ゲームの進行を機械端末にそのまま落として、機械と人間とのゲームにしてしまうという仕組みがある。勿論ルーレット台の上では本物の同じゲームがなされるのだが、機械でも一人で遊べることになる。機械の場合には、配当は機械的で瞬時になされるし、絶対に計算ミスはない。またデイーラーに声をかける必要もないという遊び方になる(これをラピッド・ゲーム等と呼称するが、なんの事はない、配当支払い処理が機械的に、かつ早く、間違いもなくでき、かつ端末機械はいくらでも増やせるため、ハウスにとっては極めて効率の良いゲームのあり方になる)。あるいはテーブル自体が巨大なモニター画面で、画面に手で触ることによりトランプが配られ、画面を触ることによりトランプをめくれ、触るだけで全ての指示ができる機械等もある。人間がお互いに介在していながら、トランプ等という物理的な用具はなく、全てのツールは電子画面でゲームは電子的に処理されるというわけである。その他巨大スクリーンに臨場感たっぷりの仮想空間での競馬等のバーチャルな賭博やデイーラーのマニュアル作業の一部を電子化したりする等電子化、システム化の進化は留まるところを知らない。これがカジノの世界にまた新たな魅力を加えていることになる。
スロット・マシーンは10年前までは、機械から落ちてくる1㌦コインや25㌣硬貨の音で一種独特の音響効果をカジノにもたらしたものだが、今では全く音がしない静かなものになってしまった。これをキャッシュレス・マシーンという。金銭の投入やクレジットカード等は受け付けるが、勝金は全てバーコード印刷された紙(スリップ)としてでてくるもので、この紙を再度投入しても金銭の変わりになり、遊べる(Ticket-in Ticket-outと呼称する)。また、キャッシャーでも金銭にかえられる。かつ、この紙を受け入れ、24時間金銭と交換できる自動金銭交換器なるものまである。要は、スロット・マシーンから現金の支払い行為を一切無くしたわけである。従来機械からの金銭の取り出しや、コインの定期的な充填、大当たりのときの支払い処理などに関しては、都度人間が介在し、大変な労働力を要したと共に、現金取り扱いとなるために、不正防止の為の仕組みや手順を必要とした。これが、全て不要となり、人間が介在しない以上、不正防止を徹底できるようになった。かつ維持管理費用もかなり縮減することになる。機械ゲームの電子化や情報装備化は、この様にどんどん進んでいるが、実はこれは、規制や監視の在り方も変え、かつ制度そのものを変える要素をはらんでいる。不正のリスクが物理的に減少しているとすれば、規制の在り方も簡素化することができるからである。