法の執行を如何に厳格に行い、施行に関与する主体の行為、行動を監視し、かつ、行為の結果を検査・検証することがゲーミング・カジノ規制の基本となる考え方になる。これは三つの要素から構成される。即ち、①規制を設け、行動を律すること、②監視により行動をモニターし、違法行為を抑止すること、③行為の結果を検査、監査し、違法行為や規範からの逸脱が無いように確認することである。①、②の対象は施行者、顧客共通項目となるが、③は施行者のみに関連する。
内、②、③は、厳格な規制を設け、かつ法の執行を厳格に実践するという意味では他の産業とはかなり異なり、ゲーミング・カジノ法制の特色であるともいえる。②の監視は、制度的にはまず施行者自身の主体的な努力により監視がなされるように、制度そのものを制定することが基本となる。例えば、場内のリスク区域に関するビデオ監視義務、ゲームの進行の録画、記録映像の一定期間保持義務、監視の在り方の手続き規定、場内の監視・警備組織の具備義務などは全て規則によりそのあり方が決められる。これを主体的に実践して、監視・警備を担うのはあくまでも民間施行者である。この結果、顧客の賭け金行動並びにゲームや金銭に係わるハウス職員の全ての行為は24 時間監視の対象となり、かなりの数の固定式ビデオや可動式ビデオ(空中の目、Eye in the Airとこれを呼称する)が設置され、中央監視室から全てを監視し、かつ映像を記録する手段が取られている(最も最近の技術の発展は、監視映像を持ち運び可能な簡易電子端末に自由に落とすことを可能としており、より機動的な監視ができる仕組みがとられつつある)。さらに実際の行動には職員同士が相互監視するような事務処理手順規定を設けることにより、自らの監視を徹底する。これを効果的にモニターするために、ビデオ監視端末機械を規制機関や法を執行する機関への設置を義務付け、オンライン、リアルタイムで情報を共有することになる。また、施行者の監視部門は、施行者のトップと規制機関に直接報告、連絡する義務を有し、施行者の実際のゲーム運営組織とは異なった立場として位置付けられることが多い(現場組織から切り離し、組織保護のために起こりかねない不法行為の隠ぺいや、見逃し、腐敗・汚職の可能性を断ち切ることがその目的となる)。
規制機関は、オンラインでゲームの結果や実際のゲームの進行を監視できるが、監視行為自身は施行者の監視部門が主体的に担い、規制機関の役割は施行の全般をモニターすることがその主たる業務になっている。尚、施行者の警備部門は監視部門とは別に存在し、監視部門と連携し、場内の秩序維持を担う。この意味では、問題の顕在化や違法行為の発見等も民間施行者の監視部門・警備部門がその端緒になることが多い。尚、規制機関の査察官や法の執行を担う警察官が当該ゲーミング・カジノ施設に(特定の部屋を得て)常駐することもあるが、これは一国の制度や状況次第ということになる。民間による自立的な監視・警備で十分な体制が取られていると判断される場合には、不要となる場合もある。また場内に警察官等を配置することは威圧感を与えることになることになるため、犯罪の抑止に効果はあろうが、否定的な効果もありうるという意見もあり、その適否は状況次第でもあろう。この様に、監視の基本は施行者自らがこれを担保しつつ、当局が適切にモニターすることが制度の基本ともなっている。もっとも施行者と規制機関のコミュニケーションを良くし、監視の費用を縮減するため、査察官を常駐させ、常時施行者を監視することが一部の国では行われている。行為の監視はそれが効果的になされればなされるほど、犯罪を抑止する効果は確かにある。尚、もし、犯罪や違法行為を発見した場合には、直ちに法の執行当局(警察)に通告され、適切な措置が取られることになる。
検査、監査とは規制当局による施行者の行為の結果の事後チェックのごときものになる。一般的に規制機関の査察官、検査官等は、監視ビデオの閲覧権、帳簿の閲覧権、任意のデータ等へのアクセスなど、任意に施行者のデータにアクセスできるとともに、これに加えて、定期、不定期検査並びに監査を実施する権利を保持していることが通例である。また、施行者は定期的に規制機関への報告や資料提出の義務を義務づけられる。これら検査、監査等の実施過程で、違法行為や不適切な手順が露見した場合には、罰則が適用される。
この様に、ゲーミング・カジノの現場は、緻密な監視と管理体制により、その全てが監視され、モニターされることが通常になる。だからこそ、犯罪を限りなく抑止でき、組織悪や不正を排除することができる。