古今東西、ゲーミング・カジノを認め、これを施行する最も重要な政策上の理由は、この行為を為政者が認めることにより、対価を得たり、施行の結果から税、納付金あるいは負担金を徴収したりすることにあった。ゲーミング・カジノの運営は施行者にとり極めて豊かな現金(キャッシュ)を生み出すことができ、施行者の勝ち分に対する課税は、庶民にとっても直接的な負担感が無いために反対が起こりにくいという事情から、為政者にとっても課税の対象にしやすいという背景があったといえる。この場合、課税の対象となる基本は、施行者の勝ち分(総売上、即ち総賭け金から顧客勝ち分を差し引いた経費控除前の金額、あるいは顧客の損失額総計となる。事業者の総粗収益~Gross Gaming Revenue~ともいう)であり、実際の税負担者・納税者は(負けた顧客ではなく)施行者(胴元)となるために、顧客から見た場合、課税の論理は解り難いという状況になる。かつまた、庶民の懐から取る税金ではないために、国民の理解や政治的合意形成を得やすいという利点がある。また、施行者はこの税支払後、費用を控除して、所得を確定するが、この所得に対し、通常の企業所得税が賦課されることになり、企業所得税から逃れられるということではない。即ちゲームの売上に対する課税は、所得税を代替する課税としては通常考えられていない(勿論例外もあり、例えばカジノ税率が相対的に高いマカオ等では、カジノに関する事業活動に関してのみ運営事業者にとり企業所得税は免税となる。一方、カジノ外の売り上げは、通常の企業所得税の対象である)。
尚、公的主体にとっての収益の徴収方法は、一般的には下記可能性がある。即ち;
1) 税として徴収する。
2) 納付金、交付金という形式をとり、税ではないが財団や特定公益主体や公益勘定に納付させ、ここから公益目的の為に支出、再配分する。
3) 税ではなく再投資義務として、地域に還元させる(これができない場合、税として代替納付することも可能)という考えもある。
4) 税としてではなく、収益の配分権益を公的主体が直接取る、あるいは民間施行者との契約によりリスクと便益を民間施行者と分担する等の方法もある。
一方、収益を関連する国や地方政府などの多層にわたる公的主体間でどう配分するかという問題もある。賭博施行に関しては、国、地方政府、市町村など様々な公的主体が利害関係者として関与することになり、政策の趣旨とこれらの主体による関与の在り方次第では、収益を配分する、あるいは均てんするなどの配慮が必要になってくる。勿論これは期待税収の大きさとの兼ね合いになるが、当該主体が担う役割と地域的に負担するコスト等の兼ね合いで決められることが多い。例えば、カジノが物理的に設置される基礎的自治体にとっては、この賭博施行を招聘するホスト役を担うコミュニテイーでもあり、当然その社会的費用は他の自治体より大きくなることから、かかる設置自治体が、より多く配分を受ける仕組みを前提とすることも多い。また、広域を所管する地方自治体と設置地方自治体との間で何らかの合理的な配分の仕組みを取り決めたり、あるいは不公平感が出ない様に設置地方自治体の近隣の地方自治体に対しても、何等かの配分を考慮したりすることもある。収益配分の問題は、政策論としては最も重要な課題でもあり、多様な考えが存在し、地域毎の特性を反映することが多い。
一方、個別の公的主体にとり、如何なる目的のために施行収益を使うのか(使途)は大きな政策的選択肢ともなり、予め法令でこの支出使途を特定化することが通例である。単純に一般財源に充当することは簡単だが、多くの場合、賭博施行の正当性を確保するためにも、本来一般財源からは予算の振り当てができにくい分野に特例的に予算配分するために、特定財源として用いる考えが採用されている(例えば、年金会計、老人保護、身体障害者補助、教育施設支援、子育て支援などである)。勿論、収益の大きさ次第では、これら使途の組み合わせが前提となることも多い。また、収益に課税の余地がある場合には、追加課税が考慮されたり、財源不況になったりした場合の増税対策として活用される場合もある。粗収益(売上)に対する課税がゲーム課税の基本ともなるが、賭博行為に用いられる器具や機械等の資産に対し、特別資産課税を課したり、顧客に対し、入場税を課す、あるいは消費行為に特定の遊興税等を課したりすることにより、広く、薄く課税したりするという風に税源を他に求める追加的課税手法もある。但し、顧客を対象とする課税行為は、一般顧客の離反を招き、逆に需要が低減し、税収が減ってしまうというリスクをも含んでいる。
尚、賭博税収が無視できない程一般財源に組み込まれたり、固定支出財源としてロックインされたりしてしまうと、環境変化により税収の変動が生じた場合、財政運営上大きな課題になる(不況時、収入が減れば、歳入欠陥がおきかねないためであり、増税の対象になりやすい)。これはカジノの運営そのものを不安定にさせてしまう結果をもたらすこともありうる。