ゲーミング・カジノ法制とは公権力行使の側面が強い法体系である。最も一般国民に対する公権力の行使というよりも、特権(プリビレッジ)が与えられた施行を担う民間主体に対する公権力の行使という側面が強い。特権である以上、国民が連邦憲法上保持する権利を侵害しかねない側面があるということになるが、この意味では、米国の一般法の考え方からは逸脱する側面がある。だからこそ、その内容は慎重に、かつ詳細に規定すべきということになる。米国のゲーミング法制度は法自体が実施法といえる程に内容を詳細に規定しているのだが、実際の運用に関しては施行の細則に委ねられ、この細則を見て、全体像を理解できるという構成になっている。この法の施行の詳細を定める細則の制定は、規制機関が規則(Regulation)として、これを定めることが通例である(よって、規制機関自体がかなり強力な行政権限、準立法権限を保持する行政組織となる)。
規則(Regulation)とは、規制機関が定める運営細則になる。かなり詳細かつ専門的・技術的項目も含まれることがゲーミングに係わる規則の基本になってしまう。その範囲は広く、かつ規制としての内容も極めて濃いことが通例である。規則の範囲としては例えば、免許付与手順・要件、運営者・従業員・試験機関等の免許・認可手順、機器・器具・機材・システム等の使用・保管等認証手続き、聴聞手続、会計・内部管理手続き、税金徴収手続、運営基準、ゲームのルール・管理マニュアル等の作成指示・見直し・認可、ゲーミング・フローアにおける運営前の機器検証手順、種類管理、取引業者・契約認証基準、監視・映像記録・保管義務手順、警備手順等多岐に亘る。、経営や運営のみならず、技術をも包含するため対象範囲が広いこと、状況次第では新たな規則が制定されたり、不断に改定されたりすることがその特徴になる。
技術標準(Technical Standards)も重要な規制上の基準になり、かつその対象、範囲は、運営、使用する機材や機械、システムに跨り、これも全て規制機関が定めるべき制定事項になる。例えば、スロット・ビデオマシーン・システム、カジノ・モニタリング・システム、キャッシュレス・システム、ジャックポット・システム、顧客トラッキングとプロモーション・システム、サーバー管理型ゲーム標準、テーブル・ゲーム技術標準、ビデオ・ゲーム技術標準等多岐にまたがる。技術標準の要件とは①製造業者に設計目標を提示、統一的な試験を可能にすること、②法律や規則の技術的解釈を提供すること、③内部管理マニュアルを含むものであること、④システムが機能し、規制機関の必要条件を満たすことを確認できること、またそのために明確な技術標準の定義があること、⑤新技術の使用に対応するために定期的に更新されるべきものであること等になる。ややこしいのは技術の進展の早さでもあり、現代社会におけるゲーミング・カジノ施設には様々な新しい技術が導入されつつある。新しいカジノの技術とは、例えば、クライアント・サーバー・テクノロジー、ダウン・ローダブル・ゲーム(サーバーで管理し、ダウンロード可能なゲーム)、ワイアレス・コミュニケーション、キャッシュレス・マシーン(現金支払いをしない電子式機械ゲーム)、チケットイン・チケットアウト(バーコードによる支払決済を前提とした電子式機械ゲーム)、スマート・テーブル(バーチャルなカードやチップを用いて遊ぶテーブル)、チップ等へのRFIDへの使用(不正防止のためにチップにICチップをいれる)など、情報技術やシステムが多面的に活用されるため、かなり専門的でかつ複雑多岐に亘っている。
規則、技術標準の特徴は、①技術的、専門的事項が多いこと、②実務上遵守すべき詳細手続として厳格にその施行がなされる規律となっていること、③市場における技術の進化・発展や実際のビジネス慣行等によっても、これらは不断にその改定を考慮されるべきこと、④決して固定的なものではなく、柔軟に対応している側面もあること、などになる。かなりの専門的知識が無い限り、判断基準や規則のあり方を検討できないことになり、かつまた柔軟な判断力が必要になる。規制機関や法の執行を担う主体にもかなりの専門性や知識が要求されることになるといっても過言ではない。この意味では規制機関の役割とは、単純な行政官としての「認可行政」や「管理」とは大きく異なる。勿論専門技術の評価等に関しては民間部門における独立した認証機関や中立的な団体、あるいはコンサルタントを利活用するなどの手法を併用することが通例で、全ての実務まで規制機関が担うということではない。但し、その最終的な評価には技術的判断を必要とする。