ゲーミング賭博規制の基本となる考え方は、厳格な参入規制にあり、ゲーミングを商行為として提供する主体に対し、規制機関による一方的な判断により取消可能なライセンス(免許)を付与することでこれを規制する。この規制を厳格に執行することにより、入口で、組織暴力団関係者や、犯罪に関係しうるリスクのある個人、法人をこの業界から排除することができる。この考えを網羅的に関係者に要求することがネバダ州における規制手法の基本でもあり、以後ほぼ全ての州や諸外国において踏襲されている基本的な考えともなった。ネバダ州ゲーミング委員会は、異なった類型のライセンスと認可を定義し、これを付与しているが、専ら事業者が担うリスクに応じてこれらを分類する手法をとっている(尚、2011年の全関連事業者ライセンス総数は2,875になる~出所:GCB Information Sheet~)。
これは下記4つに分類される(事業者数データは2011年レベル)。
① 制限無しライセンス(447事業者):
通常のカジノ事業者に適用されるライセンスとなる。16台以上のスロット・マシーンを保有している施設、一定の場所に数に関係なくスロット・マシーン等のゲーム機材を設置し、その他のゲーム種、レース・ブックないしはスポーツ・ブックなどの賭博行為を提供する施設、カジノ施設間相互リンクシステム、モバイル・ゲーミング・システムの運営等を対象として付与されるライセンスである。
② 制限付ライセンス(2,016事業者):
一定の場所で15台以下のスロット・マシーンを運営し、テーブル・ゲームを設置しない場合に付与されるライセンスとなる。通常対象事業者となるのは、小さなバー、レストラン、食料品販売店等の小規模事業者でかつ専業ではないケースが多い。規制の対象と内容が簡素化されていることが特徴となる。
③ 製造家・販売家ライセンス(336事業者):
ネバダ州のカジノに機械、機材を提供する全ての内外の製造事業者、販売事業者は、その製造・販売行為を担うことに対して、ライセンスを取得する必要がある(主体の認証であり、機材・機械等の認証は別に必要となる)。
④ スロット・ルートオペレーター・ライセンス(57事業者):
ネバダ州以外には存在しないビジネス・モデルだが、小規模スロットの設置場所を借り、施設所有者に一定の費用を支払う形で異なる場所の多数のカジノ・スロットを一体として運営する事業者をルート・オペレーターと称し、これに関するライセンスになる。
またゲーミング・コントロール・ボード並びにゲーミング委員会は、如何なる個人ないしは法人に対しても、1)ネバダ州におけるあらゆるゲーミング活動に影響を及ぼしうる場合、2)ライセンス取得者とゲーミングがもたらす収益を分担する場合、3)ゲーミング・ライセンス保持者に対し資金貸し付けを行う場合、4)ゲーミングが実施される施設の土地所有者である場合、別途当該当事者にライセンス(免許)取得を要求することができる。即ち、ネバダ州では、如何なる活動であれ、カジノの所有ないしは運営に影響をもたらす取引に関与する主体、並びに同等の影響力を行使できる如何なる個人に対しても、認可ないしはライセンス取得を要求することになる(よって職員やカジノ業に従事する個人も適格性認証取得という形式でライセンス取得が要求される)。
尚、一般的なライセンスとなる制限無しライセンスの場合、申請者たる企業は州政府審査費用としてまず約 $50万㌦ ないしは100万㌦ を支払う。州政府は約1年かけて審査を完遂し、ライセンスを発行するが、2回の聴聞会が開かれ、あらゆる個人・企業の過去数十年間にわたる行動並びに財政的状況等が査問の対象となる。ゲーミング・コントロール・ボードは最終的にゲーミング委員会に対しその可否を推奨する。 ライセンス付与の基本的な判断基準は申請者の人間としての属性・性格・生き様になる。組織犯罪に関与しているようであれば当然不適格となるが、立証は難しいのが現実であろう。また、ライセンスを拒否するに際し、犯歴があるかないかは関係がない(あれば問題外で許諾されない、無くても問題ないということではなく、疑われれば一切許諾しないということになる)。よって、単純に形式要件が満たされていれば、許諾するということではなく、追加的な判断基準により、規制機関の一方的判断によりその可否が判断される。
例えば:
・施設整備、運営に必要となる財源の正当性: 資金が犯罪と関係なく、正当な資金源であることを立証する必要があること。また当該事業がしっかりとした事業性を保持していること(後者のライセンス要件は、ラスベガスのホテルの財政状況が悪い時に制定されたもの)、
・事業を担う能力の有無: 州政府の歳入と消費者を保護するために、カジノ運営者が能力のある詐欺者に対処できる能力があることを求めること、
・提案される施設の立地点:教育施設等から離れた適切な立地であることが要求されること、
なども判断の対象になる。これらの判断基準は必ずしも客観的ではないこともある。