韓国の観光振興法施行令第28条は、カジノ施設に関し、新規許可がおりた時点以降、外国人観光客が30万人増えた場合、新たなカジノ施設を30万人増加分あたり2ヶ所設置することを可能とする規定がある。一方現実には1994年以降2003年までに外国人旅行客は140万人も増加しており、経済の活性化と共に、観光振興に対する経済的期待も高まっていったのが現実となる。大都市における観光客数は、この間確実に増大したという事情もあり、新たな外国人専用カジノを設ける機運が、政策的に生じてきたという事情も生まれた。
この結果、2000年代中葉以降、下記状況が生じている。
① 2004年政府は新たな外国人専用カジノを首都ソウルに2ヶ所、プサンに1ヶ所認めることを公告した。同年民間事業者からの提案申請があり、結果として、政府関係会社でもある韓国観光公社(Korea Tourism Organization)が落札、同年政府との協定書が締結され、2006年に施設が開業された。このカジノの実現と施行は、同公社が100%出資するグランド・コリア・レジャー(株)Grand Korea Leisure Co.に委ねられた。尚、このグランド・コリア・レジャー社は、2008年11月韓国株式市場(KOPSI)で株式を30%売却し、上場している。外国人専用カジノであっても集客が効果的な大都市地域では、確実に収益を上げることができ、かつ後発である公社は都市内部の有利な地点を押さえたため、既存の外国人専用カジノを運営する民間企業にとり、競争的には苦しくなる状況が生まれている。後発の新たな施設は市内中央部に位置し、既存の施設より遥かにロケーションは良いからである。
② 既存の外国人専用カジノ施設に内国人も入れるようにする考えや、新たに内国人も参加可能な統合型リゾート・カジノを、施設数を限定して、都市部にも設置すべしという主張は継続的に内外の産業界から主張されている。一方、現政府は、外国人専用カジノに関しては現在以上に設置許可の条件を厳しくすることを表明しており、かつ内国人カジノに関しても、1ヶ所に限定した今以上に設置数を増やすことは国民の理解や環境が熟していないとして否定的な見方をとっている。但し、韓国では国内の潜在的需要は明らかに供給を上回るため、政治状況や周辺諸国との競合状態次第では、新たな展開が生じる可能性も高い。但し、既存の制度との兼ね合いや、利害調整は単純ではなく、外部から見るほど単純に内国人可能なカジノが追加的に実現できるとは到底想定できない。
③ ソウル、プサン等の大都市にあっては、既存の外国人専用カジノ企業は売上・収益とも確実に伸びてはいるが、他地域特に観光地に設置された外国人専用カジノは済州島も含めて、売上・収益は継続的に低迷する状況が生じている。このため外国人カジノ施設は明確に二極分化しつつあり、単純に業全体が発展しているという構図とはなっていない。一方、内国人も利用可能なカジノ1ヶ所は、その地域的独占性により、継続的に売り上げ、収益を伸ばしつつある。
④ 「済州特別自治島の設置及び国際自由都市を助成するための特別法」が2006年に制定され、2008年に一部改定された。これは済州島自体を国際競争自由市へと発展させることが目的の法律である。この中で、外国人専用カジノ業の許可権限の規制緩和、外国人投資促進のためにカジノ業にも外資が参入できる適用特例の制定、済州島観光振興基金の設立、英語教育市の実現、医療機関誘致等が規定された。この法律に基づき、一部韓国企業が保持する済州島の外国人カジノの権利が米国独立系事業者により買収されたり、その他の外資が一部資本参加し、新たな施設整備が計画・実施されたりするなど、新しい動きが見られた(但し、この結果、設置数自体が増えたわけではない)。
⑤ 従来大都市の外人専用カジノの主要顧客は日本人であったのだが、段階的に中国人顧客が増えつつある(済州島では、中国人は入国ビザが不要であること、一部済州島カジノでは、マカオと同様に、華僑系ジャンケットが実質的な運営リスクを取りVIPルームの部屋借りをし、中国、台湾、香港等からツアー顧客を誘致するなどのビジネスモデルが既に生まれている。但し、効果的な規制や監視がなされているか、公正さが確保された仕組みとなっているか否かに関しては懸念無しとしない)。中国人来訪者は2000年では3.84万人であったものが、2009年には10倍の37万人に増大している。一方2000年に日本人顧客比率は67%であったものが、2009年には47%に減少しており、段階的に顧客層に変化が現れつつある(一方、韓国を訪問する外国人旅行客は年々増えて2012年ではわが国を超える1,100万人規模になっており、この内の約200万人程度がカジノ施設を来訪しているとのことである)。