台湾では、カジノは今後実現しうる新しい賭博種になるが、既存の賭博種あるいは賭博に類似的な簡易賭博機械等のゲーム機械が従来から市場に存在する。安価な商品や現金を賞品として、ゲームを遊ばせる機械は、我が国と同様に昔から存在し、これを提供する施設を台湾では、ゲーミング・アーケードと呼称していた(我が国の遊技と類似的になる)。当初は警察省がこれを所管し、全面的に禁止の対象としていたが、闇行為が横行し、意味がなくなり、その後1990年に一種の簡易賭博の如き存在として一定のライセンスを付与することで、制度化、認知され、この時点で、政府所管が教育省となった。当時ゲーミング・アーケード管理ガイドライン等も制定されたが、そもそもかかる行為を認めたり、罰則を規定したりする根拠法がなく、実態は混乱した状況であったというのが現実である。かつまたゲーミング・アーケードを巡るスキャンダル等も現れ、1996年には所管が経済省(Ministry of Economic Affairs)に移管され、現在に至っている。2000年には「電子式ゲーミング・アーケード管理規則」(Statute on the Management of Electronic Arcade) が制定されたが、2003年にはこれも改定され、「電子式ゲーミング・アーケード事業規制法」(Electronic Game Arcade Business Regulation Act)が制定されている。
この場合の電子式ゲームとは、商品の価値に基づき下記二つの種類に分類され、これに伴い、事業者が取得すべき認可の種類も異なる。即ち、
① 一般レート(General Rate)ライセンス:賞品となる景品の価値は$33以下
② 制限的レート(Restricted Rate)ライセンス:18才未満は参加禁止。賞品となる景品の価値は$66以下となる。
データとしては若干古いが、2008年2月時点で、台湾におけるアーケード総数は3,904施設、関連して政府が出したライセンスの数は2007年時点で20,200となる。内、一般ライセンスとは我が国でいうゲーミング・センターに近い施設をも含むものである。制度上は、①18才未満は参加禁止であると共に、②景品として、現金、換金可能な有価証券ないしはその他の通貨を提供することは禁止されると共に、③顧客に対し提供された景品を現金で再購入することも禁止されている。これらゲーミング・アーケードの平均的な1施設あたりの機械設置数は80台、台湾における総ゲーム機械台数は117,120台(2007年レベル)、機械毎の日あたり純収益(Net Win)は、$125程度になり、2007年レベルにおいて、既にアーケードの総売り上げは53億㌦規模に達したと想定されている。注目すべきは、台湾におけるITCや電子機械の発展でもあり、かかる電子式ゲーム市場の存在は、これに関連したゲーム機械、電子機器、システム機器、電子部品市場を発展させ、一大産業を構成しつつあるということでもあろう。一部電子機械は、限りなくスロット・マシーンやビデオ・マシーンに近い内容のものでもあり、これら電子機器や情報機器の発展が、台湾におけるゲーム産業自体を支えているとも想定される。尚、このほか台湾ではロッテリーも認められ、盛んであり、公共福祉ロッテリー(Public Welfare Lottery)と台湾スポーツ・ロッテリー(Taiwan Sports Lottery)の二種類が存在し、前者は、年平均売上は20億㌦、公社は4億㌦レベルに達する。この意味ではロッテリーをもゲームの一種として勘定する場合、台湾の既存のゲーム市場の規模は約77億㌦相当になる(アーケードゲーミング53億㌦+ロッテリー24億㌦)。
台湾のこの分野における特徴は下記にある。
① 我が国と同様に、大衆娯楽としての(景品交換が可能な)ゲーム機械市場が存在し、制度構築以前に事実が先行、近年になりその制度的位置づけが明確化したという事情がある。但し、賭博類似的な行為が先行して市場に存在し、実際のゲーム機械もスロット・マシーンやビデオ・マシーンに酷似したものが多い。
② 台湾人の賭博志向好きにもよるが、経済の発展と共に実態経済の中でこのゲーム機械市場は庶民の人気を得て大きく発展した。但し、制度的には限りなく、グレーの領域になる側面も損愛し、この点わが国における遊技と一部類似的な所がある。
③ 国民のゲーミングや賭博行為に対する消費性向は中国人と同様に高い。富裕層はマカオ、シンガポール等の外国ゲーミング市場における上客ともなっており、富の流出に繋がっている側面もある。