インターネットや情報技術の発展のピッチは極めて早く、常に新しい技術が市場に提供されている。これには、単純なものから複雑なものまで、多種多様な考え方や手法がある。この意味では、本来、インターネット賭博ないしはインターネット・カジノとは何かという定義を、より詳細に規定することから始めるべきなのであろうが、制度的にこれをうまく定義できている事例は未だ無い。現実が先行し、インターネットは一種の顧客との電子的インターフェースのツールとして用いられながら、同時に多種多様の賭博やゲーミングの提供手法として用いられつつあり、極めて多様な活用がなされているのが実態である。この過程であらゆる技術要素も進化・発展しつつある。
例えば下記の如き賭博の在り方があるが、これらは全てインターネットとの関連で把握すべき賭博行為なのであろう。
① 単一顧客とコンピューター(バーチャル・ゲーム):
コンピューターが提供するロジック、3D画像を通じて、胴元(システム)が提供するソフトウエアとなる賭博ゲームに顧客が参加し、僥倖に賭けるインターネット・ゲームである。古典的なインターネット・ゲームやネット・カジノはこの分類になる。画像処理は技術の進展に伴い、現実に近い映像迄可能となり、これによりスロット・マシーンや、あらゆるテーブル・ゲームを仮想現実として、臨場感あふれる形で提供することが可能になる。ルーレット、ブラックジャック、バカラ、スロット等カジノと全く同じ賭博種がある。
② 複数顧客とコンピューター(バーチャル・ゲーム):
考えは上記と同じだが、システムが同時に複数の顧客に同時的に提供することにより、複数の顧客が、任意にかつ勝手に、自由に金銭を賭けることができるような仕組みになる。例えば、ルーレット・ゲームをシステムとして不特定多数の顧客に提供することにより、複数の顧客が勝手に、また自由に一つのゲームに参加し、金銭を賭けることができるような仕組みになる。一種のソーシャル・ゲームに近い考え方を含むことがある。
③ リアル(ライブ)・ゲーム、但しネットで提供:
実際のデイーラーを画面に登場させ、オンラインでこのデイーラーとのリアル・ゲームを不特定多数の顧客が楽しむ手法になる。デイーラー、テーブル上のカードが表示され、デイーラーには見えない形でシューから配られるカード等を画面上に写し、対話をしながらゲームを楽しむことができる。ネット・ゲームというよりも、リアル・ゲームの画像提供と賭け金決済に関し、ネットをツールとして利用しているだけとなる。膨大な情報量をやり取りすることが可能になり、初めて実現できた考え方でもある。
④ 顧客同志のインターネット上での賭け事になり、事業者は場を提供するのみ:
ベッテイング・エキスチェンジという賭け事の仕組みがあるが、顧客同志がスポーツないしはその他のイベントの結果に対して他の参加者と賭けを交換する(賭博事業者やプールに賭けるのではなく個人が相対で賭けのポジションを取り合い、胴元はコミッション商売をする形になる)。あるいはこの前提でマルチ・プレーヤーゲーム等も存在し、例えば一度に数千人が同時に楽しむインターネット・ポーカー等のトーナメント・ゲームもある(参加費と賭け金により参加し、賭け金を積み上げ、顧客同志で賭け合い、勝者が独り勝ちする仕組みになる)。
⑤ パリ・ミュチュエル賭博におけるセールス・アウトレットとしてのネットの使用:
競馬、宝くじ、ロッテリー等に利用されるインターネット活用手法で、馬券やロッテリーくじのセールス・アウトレットとして、情報を提供しながら、画面から賭け金を振り込む、あるいは馬券を購入する等という仕組みで、インターネットは、あくまでもこれら投票券の売買の為のツールないしはインターフェースとして用いられていることになる。単純でないのは、今や同じ画面で、実際の競技の画像と帰結をも自分で確認できるようになっている。こうなると、機能的には競馬場に行かなくとも、競馬を楽しむことができることを意味する。賭け事としては、参加者がスポーツや競技、あるいは何等かのイベントの結果に賭ける行為でネット賭博事業者ないしは賭けのプールがこれを受けることになる。
⑥ 胴元(固定オッズ・スポーツベッテイング)と顧客、ツールはネット:
類似的だがスポーツ・ベッテイングや固定オッズ等で、胴元がリスクを取り、オッズをネットで提供し、顧客がネット経由賭け事に参加する仕組みになる。ネットは販売のためのツールでしかない。
⑦ サーバー・ネット管理型賭博:
顧客が扱うのは単なる端末機械で、実際にはこれら機械はインターネットを通じ、オンラインで、ホストサーバーに連結され、サーバーが全てのゲームを管理し、勝ち負けを確率的に決めるようなゲーム手法をいう。顧客の立場から見た場合、物理的な機械が提供するゲーム賭博を楽しんでいるように見えるが、実態はオンラインシステムにより端末機械に提供されるゲーム賭博を遊んでいるわけで、実際の運営や管理にインターネットを見えない所で利用していることになる。
この様に、インターネットの特徴やメリットを賭博行為に活用しようとする様々な手法があることになる。賭博行為をシステムとしてオンラインが提供する考えとインターネットを単なる情報や決済の手段として用いる考えとでは、制度や規制の在り方は大きく異なってくる。これは、何をどこまで「インターネット賭博」と括ることが適切かに関しては、多様な考え方がありうることを示唆している。