ここ数年我が国においても、所謂ネットカフェと呼ばれる風俗営業施設において、違法なインターネット賭博を提供する行為が摘発される事例がかなり生じている。インターネット・カフェとは、業態的にはカフェ(喫茶店)とブロードバンドに接続したインターネット器具・機械端末を時間貸しし、顧客に時間的遊興やネット・サーフィンを提供する施設になる。ネットによるゲームとか今ではネットワークで顧客同士が遊べる参加型のゲーム等も存在し、インターネットとはいいながら、その機能は、アミューズメントセンターや一般の遊興施設と変わらないものになってしまいつつある。
このネットカフェでいかにして違法なインターネット賭博がなされ、かつそれが検挙されるに至っているのであろうか。インターネットそのものは、機械対個人の関係になり、優れて個人的な行為にすぎないのだが、なぜこれが違法インターネット賭博へと繋がるのであろうか。もし、インターネット・カフェが単なる場所を提供しているだけであるならば、個人たる顧客がインターネットを用い、個人的な責任と勘定で違法なインターネット賭博を楽しんでも、第三者からはこれは全く捕捉できない、個人の世界の事象になる。もっとも不特定多数の顧客が集うかかるネット・カフェで、個人情報たるクレジット・カード等を用いることはセキュリテイー上大きな課題を残すことになりかねない。かつかかる場所で、アカウントや支払処理を個別に設定することは通常はあり得ないことになる。但し、もし第三者であるネットカフェの運営事業者がかかる煩雑さを取り除くアレンジを提供できえたとすれば、顧客は、極めて単純なネットカフェとの現金のやりとりで、違法なインターネットによる賭博行為にアクセスできることになる。この仕掛けには様々な考え方があるが、たとえば下記のごとき手法がある。
① 個人対ネットという関係を、ネットカフェ事業者対顧客という関係にすり替え、ネット上の賭博行為に伴う支払・入金をネットカフェ事業者が一括して代替することができれば、顧客にとっての利便性と簡易性は増大する(賭けの決済を顧客とネットカフェ事業者との間ですぐさま現金で行い、後刻ネットカフェ事業者が予め取り決めてあったインターネット上の事業者と精算をする仕組みになる。実質的にはシステムが提供する賭博ではなく、オンラインで人間のデイーラーを配置し、ライブ・ゲームの様に画面上でこのデイーラーと個別に遊ばせるという形式が多い。アナログ的に実際の勝ち負けを記録することができるからである)。勿論この行為自体は違法であり、これは本邦にいる主体同志間(即ち顧客とネットカフェ事業者)の賭博行為でしかない。
② 端末を利用する顧客によるゲームの帰結に対する決済は、一括してネットカフェ事業者が対応することは不可能ではない。アカウント、アクセスパスワードを統一し、顧客との間では現金決済をし、ネット事業者との決済は別に処理すれば事足りるからである。これをアナログで処理することもできれば、海外のネット事業者と結託すれば何でも処理できる。あるいは海外にネット事業者自体を設立し、これがネットカフェを直接経営運営するということも不可能な構図ではない(もちろんこれも違法行為となる)。かかる場合、海外のネット事業者の清廉潔癖性も疑わしいと考えざるを得ない。
③ 上記構図は、海外のネット事業者は明らかに、顧客に対し賭博行為を提供してはいるが、ゲームを中立的に提供しているだけであって、我が国においては、ネットカフェ事業者と顧客との間で、現金を介在とした賭博行為が行われているということになる。更なる問題は、かかる違法賭博を提供するネットカフェ事業者は組織暴力団であることが多いという事実になる。
④ また、上記は、明らかにインターネットを一つのツールとして利用し、外国の事業者と事実状結託することにより、表向きの世界を構成しているにすぎない。実際の賭博行為はネットカフェ事業者と顧客との間で成立していることになる。だからこそ、摘発が可能になる。この意味ではインターネット事業者と顧客が違法ネット賭博に関与したという理由で逮捕されたわけではない。単なる賭博行為の現行犯として逮捕されたにすぎない。
この様に、インターネットを一つのツールとして用いることにより、実際の賭博行為をうまくカムフラージュすることが可能になる。また海外のネット事業者と本邦のネットカフェ事業者がお互い違法なることを承知の上で、結託して一定の枠組みを取り決めてしまえば、いとも簡単に賭博行為を顧客に提供できることになる。個人にとりややこしくなる手順を簡素化して提供すれば、顧客は利便性が増すということで賭博行為に参加しやすくなる。実態はこの裏で収益を分担する形で海外と我が国のいかがわしい主体が違法行為をするということになるわけである。