超党派議員連盟である「国際観光産業振興議員連盟」は、10月23日の午後14時に幹事会を開催、懸案となっていたIR推進法案を審議し、その内容に関する合意形成の在り方、今後の内部的に詰める手順、取られるべき行動等につき、議論し、一定の方向性と結論を出している。この方針に基づき、参加している与野党が各党内部での根回しを実行し、本年11月中に議連総会を開催、その場で最終的な法案の内容を確定し、その後与野党各党内部の合意形成を経た上で、11月末には法案を上程することがほぼ確定した。当然のことながら、付託される内閣委員会にて法案趣旨説明まで行い、審議ができる状態にまでもっていくということが想定されている。最も単純でないのは、6月7日に維新の党が独自に提出した法案と議連が提出しようとしていた法案とは3点を除き、ほぼ同一であり、この相違点を調整する必要がある。若干の修正を加えれば、議連に参加している与野党いずれもが賛成できる内容になるため、技術的には未だ廃案となっていない、維新の党が提出した法案を生かして、これに対する議連の修正提案という形で提出されることになった。修正案文につき合意できれば、維新の党の顔もたつと共に、衆議院内閣委員会でひっかかったままであった法案を生かして、審議する体制へもっていくことができるというしかけになる。果たして今国会で審議できる時間がとれるか否かは当面解らないし、これは重要法案の推移が11月中にどうなるか次第で決まってしまう。場合によっては、会期が数週間伸びて、年末まで審議期間があり、審議できる時間的余裕が生まれるということも可能性としては考えられる。また審議にどの程度の時間をかけるかは、国会対策委員会レベルでの与野党間の協議、交渉事由になり、他の法案との兼ね合いや、国民のこの法案に対する懸念等によっても変りうる。慎重な審議が必要という声が強くなると、当然一定時間を割かざるをえなくなる。内容的には法律事項も少なく、プログラム法、後刻詳細な審議の対象になるという前提をとり、与野党の過半が賛成する状況が明確であるならば、審議時間をできる限り短縮して、一挙に可決の方向に持っていくということも不可能ではない。また、会期中に審議未了ということになれば、当然継続審議となり、来年の通常国会、予算案の見通しがついた後に再度審議という手順になる。
国会での動きは状況や環境次第で大きく変わるし、一つの法案が審議され、可決されるか否かは、その法案の優先度や、重要度と共に、他の要因によっても大きく左右される。可決される可能性は常にゼロではないというのが国会の現実でもある。あらゆる可能性が起こりうるのが国会でもあるし、マスコミが騒いでいるのは正確にこの趨勢を感じ取っているからなのだろう。但し、国会に正式に上程され、審議の対象になった場合、与野党の過半数の賛同がある限り、時間の問題でIR推進法は確実に可決すると理解することが常識的な判断になる。もっとも、状況次第では、審議の時間を意図的に長くとったり、将来議論すべきことを今議論すべきと主張したりして、意識的に引き伸ばしを図るマヌーバリングが起こりうるかもしれない。慎重かつ、詳細な議論が必要であることは論を待たないが、かかる議論を、政府や国民、様々な利害関係者を巻き込んで実現することがIR推進をもとに策定されるIR実施法の考え方であることを理解する必要がある。IR推進法は様々なステークホルダーを含む議論のスタートのための枠組みであって、これが実現し、初めて本格的な議論が始まる。またIR推進法だけでIRやカジノが実現できるわけがない。
よって、法案が上程された場合、時間の問題で立法府の意志が貫徹すると判断することが正しい。これに伴い、政府や地方公共団体による事前調査や事前検討が一挙にスタートする可能性が高い。尚、理解すべきはIR推進法とIR実施法の制度的枠組みは、立法者としての国会議員が議論し、合意している基本的な大きな枠組みに基づき、実現するという事実にある。全てをゼロから政府に委ねて、白紙から制度を構築する作業を前提とするならば、必ず議論は混迷化し、1年や2年ではできない。議員連盟が10年強に亘り議論してきた基本的な考えを土台に政府が検討し、詳細な実施法案が策定されることになる。この考えのエッセンスは、「特定複合観光施設区域整備法(案)~IR実施法案~に関する基本的な考え方」として、素案が議連幹事会にて議論され、次回議連総会で合意がなされる予定である。