伝統的なスロット・マシーンやビデオ・マシーンは、個別の機械毎に乱数発生器(Random Number Generator)が設置され、個別の機械毎に、確率的に当たりを出すという仕組みでもあった。要は、あたりは、個別の機械毎に僥倖をもとに決まるわけである。これはこれで、それなりに面白いのだが、これでは所詮一定の枠内での賭け事になり、当たりの金額が天文学になること(大当たり)等はありえない。個別の機械毎ではなく、例えば500台とか1000台の機械を電子的にリンクする、あるいは別の施設に設置されたスロット・マシーン同士をネットで電子的にリンクし、各々の機械における賭け金額の一定割合をプールし、このプール化された賭け金がどんどん膨れ上がり、一定の確率値に基づき、いつかはこの膨れた総額があたるというシステムがプログレッシブ・スロット・マシーン(Progressive Slot Machine)と呼ばれるスロット・マシーンになる。新聞に偶々でてくる「レストランのウエイトレスがスロットで億万長者に・・」等の類は全てこれで、別にスキルがあるわけではなく、ほんの偶然に巨額の当たりを手にしたことになる。何のことは無い、普通のスロットに、単純に射幸心を煽る仕掛けを付け加えただけのものと考えるべきなのだが、実はこのプログレッシブ・スロット・マシーンが現代社会におけるスロット・マシーンの人気を支えているといっても過言ではない。個別の機械としてみると、単独で機能するスロットだが、複数を連結して、システム化することにより、わずかの賭け金額で巨額の金額があたるという射幸心の高い仕組みを考えたわけである。電子化とシステム化をうまく応用して、顧客のニーズを吸い上げる商品に仕立て上げたということなのであろう。賭け金をプール化するという概念自体はパリ・ミュチュエル賭博的なところもあり、これをスロット・マシーンと組み合わせ、電子的、システム化したところに新鮮味がある。この場合、個別のハウス内でのプール化もあれば複数施設を跨る巨大なプール化もある。後者の場合、機械メーカーがシステム運営に参加し、リスクと収益をカジノ・ハウスと分担する仕組み等もあるが、こうなると、機械メーカーは単なる製造家ではなく、リスクを取るカジノ事業者として把握し、認証しなければおかしくなってしまう。その他個別のスロット・マシーンも、電子化し、映像を提供したり、画面を変えたりして、趣向を変え、射幸心を煽る工夫をする等、単純な賭博機械ではない仕掛けや工夫を凝らし、顧客の興味をそそるゲーム機械が市場に登場されつつある。遊技(パチンコ・パチスロ)と同様に、顧客は新しい機械、新しい仕掛け、より射幸心を煽る機械の仕組みをより楽しむという性向が強い。
一方、スロット・マシーン、ビデオ・マシーンの世界は更なる進化を遂げつつある。サーバー管理型電子ビデオ・マシーンと呼ばれるものが登場しており、顧客の前にある機械は単なる端末機械(ターミナル)にすぎず、全ての端末がオンラインでリンクされ、一つのサーバーに乱数発生器と基幹システムを設置し、このサーバーが全てのソフトウエアを提供し、かつ当たりを決めるというものになる。因みに一つの機械で複数の画面を選択することができれば、異なったゲームを遊べると共に、ソフトウエアの管理や更改なども全てこの同じサーバーで管理され、ファイバー・ケーブルで端末に送ることができる。顧客から見た場合、機械の裏のシステムがどうなっているかは、知るはずもないが、殆ど従前の機械マシーンと遊び方は変わらないし、見た目も変わらない。変わるのは、内部、システム、維持管理の手法、金銭管理の手法になるが、目の前にあるのは単なる箱、端末でしかないということであろうか。
これらは全体ゲームの電子化、システム化により、人件費を大幅に削減することを可能とし、限りなく人間の手が入ることを避けることにより、不正やいかさまをもたらす可能性を極限まで減らすことを可能とした。こうなってくると、かかるマシーンは自宅にあるコンピューターによるアミューズメント・ゲームとどこが違うのかということになるのだが、カジノにある機械は当たれば、即刻金銭交換可能な紙のスリップがでてくる賭博のための機械である。一方、様々な新しい技術の導入や遊ぶ機械の市場への導入は、今までの規制や監視の考え方を根本的に変えていかざるを得ない状況をもたらすのではないかと想定されている。人間が介在しなくなれば、不正やいかさまを完璧に管理できるが、逆にシステム自体が健全であることを検証せざるを得なくなる。但し、もしこれが完璧にできれば、あらゆるゲーム機械から不正やいかさま、悪をほぼ一掃できることは間違いない。