ゲーミング・カジノ法制の狙いとは、①ゲーミング賭博から犯罪となりうる要素、即ち放置した場合、悪や不正の温床となりうる要素を根絶すること、また②犯罪組織によるカジノ施行への関与を徹底的に排除すること、これにより③公正かつ健全なゲームが市民に提供されることを担保し、④その健全性、安全性につき公衆の信頼と信任を得ることにある。この考えを実現するために、通常は下記考えを制度の骨格として、これを実践する。
即ち;
ⅰ. 厳格な参入規制:
法人、個人を問わず、リスクがあると考えられる主体を一切カジノの施行に直接的ないしは間接的に関与させないことを基本とする。これは施行に関与する民間施行者、その5%以上の有効議決権を保持する株主、経営者、主要管理職、職員のみならず、関連機材・機械等製造・納入業者、関連サービス事業者等を含むことになる。潜在的にリスクがあるとみなされる主体を遠ざけることで、リスクが実現する可能性を限りなく極小化できると考えるわけである。これら主体に対し、施行に係わる行動規範として、清廉潔癖性(廉潔性)を要求することになる。このためにライセンス(免許)制度を設け、その取得に関し、高いハードルを設定する。その判断基準は単純な欠格要件(欠格となる要件を定義し、抵触する場合のみ、欠格となる)だけではなく、適格性(より主観的にあるべき属性を定義する)をも審査することにある。この場合の後者は、正直さ、清廉潔癖性、人格、財政的安定度と責任感等多岐にわたる側面が判断基準となる。また、申請行為の内容が適切か否かを規制当局が背面調査でチェックすることになる。申請者はこの審査に、自らの費用負担により協力し、あらゆる情報を提供する義務と申請内容が正しいことの立証義務を担う。全ての基準をクリアーして初めて免許(ライセンス)を取得できる。尚、このライセンスは特権であって、基準を満たさない事情が生じた場合、規制当局の一方的判断により剥奪、停止等の対象になる。このライセンスを取得する為のハードルは高く、単純な形で、誰もが参入できるわけではない。
ⅱ. 厳格な行為規制:
リスクをもたらしうると考えられる行為の手順、あり方を規則により厳格に規定する。ゲームそのものに関わる認可(許諾されるゲームの定義、ゲームの規則、新たなゲーム種の許諾や技術進化への対応等)、許諾されるゲーム機械・機材・器具・システム等の個別の形式認証、実際のゲーム手順や運営手順規定(テーブルのレイアウト、チップの価格や物理的特性の定義等)などによりそのあり方を規制することになる。また厳格な会計上の管理(例えば内部金銭等取り扱い手順を厳格に取り決め認証の対象にする。また、全ての金銭・チップの基本的な動きをできる限り紙に残し、後刻トレースできるようにする。チップのインベントリーのチェック、スロットの取り扱い手順、チップやカード・さいころ等の移送・使用・保管・破棄手順、金銭の徴収と計算手順等である)や監査、検査なども実施する。禁止行為を定義すると共に、あるべき手順等を定め、リスクが生じる可能性をできる限り縮減することを考慮するわけである。勿論、情報電子技術の進展や、器具・機材の進化に伴い、上記に述べた規制や監視が、簡素化されるということはある。人間と金銭とのインターフェースを少なくすれば、規制の対象そのものが少なくなるからである。
ⅲ. 厳格な行為監視と事後監査:
リスクに晒されるカジノ施設内のゲーミング区域(所謂顧客との間でゲームがなされる場所をいう)や金銭チップ取り扱い管理部署(ケージと呼ばれるキャッシャー窓口、内部管理部門)等は全域ビデオ監視により、厳格な監視の対象となる。かかる区域では、全てのゲームの行為、あるいは関連する行為の映像記録をとり、その一定期間の保管などを施行者の義務とすることで、犯罪を抑止し、不正行為の摘発をたやすくすることができる。監視部門組織は施行者の経営陣と規制機関にその報告を直結させ、ライン組織とは分離させる。癒着や、組織を守るために規制が歪むことを防ぐためである。施行運営組織の内部では、監視と警備の体制は、協調はするがお互いが牽制するように工夫する。また監視、警備、規制機関や法執行当局との様々な協力・連携による行為監視も実施され、犯罪や不正行為を出来る限り抑止するあらゆる試みが実践されることになる。尚、行為の結果は後刻検査や監査の対象ともなり、手順の逸脱や不法行為が露見した場合には厳罰の対象となることが通例となる。
上記全ての規制の考えは、ゲーミング・カジノからあらゆるリスクを取り除くか、これが生じうる可能性をできる限り縮減するという考え方に基づいている。潜在的なリスクを正確に把握することにより、その対処法を適切に考えるという共通的なアプローチであるともいえる。この基本的な考えは、あらゆる国において類似的である。