イタリアではカジノ賭博や、ロッテリー、スポーツ・ベッテイング等多種多様の賭博種が伝統的に認められていたが、いずれも国内規制により、限られた事業者や独占的な権益を保持した主体が限定的にかかるサービスを提供していたにすぎなかった(例えばイタリア国立オリンピック委員会~CONI~及びイタリア競馬畜産協会~UNIRE~のみはオンラインでもオフラインと同様にスポーツ・ベッテイングが例外的に認められていた)。一方、かかる独占行為に対する欧州委員会からの勧告もあり、2006年・2007年予算法により劇的な政策転換が実現した。2007年以降、3ヶ年計画で、段階的に国内におけるオンライン賭博規制を緩和し、認可制により、オンライン、モバイル、双方向的TV等の手法を用いた賭博行為を認めようという施策になる。
上記の結果創設された基本的な制度の枠組みは下記となる。
① 2009年6月24日付法律77号「オンライン・固定オッズ・チャンスのゲーム法」、2009年法律88/09号「遠隔ゲーミング法」により、オンラインによる賭博行為規制の枠組みが制定された。大蔵省傘下の国の規制機関であるAAMS(State Monopoly Autonomous Administration、Amministrazione Autonoma dei Monopoli di Stato)が国の規制機関として指名され、運営細則決定、全ての許認可、運営監視・監督等の権限を担っている。課税は当初は賭け金ベース(stake based)であったが、その後胴元の粗収益に対する固定率20%課税に変更されている(ポーカー・トーナメントの場合は、総バイ・イン(参加費)金額に対し、3%の課税になる)。尚イタリアでは別途27.5%の企業所得税がかかり、また地域にもよるが、2.98%から4.82%程度の地方税が存在する、当初は、AAMSにより既に認可を受けた既存の約60社の企業のみが製品を市場に提供できるという前提であったが、2010年第二四半期に、更に200社を追加して、ライセンスを付与している(尚、既存のライセンス事業者からライセンスを購入すること、既存のライセンス事業者との協定による市場参入もAAMSの許可があれば可能である)。
② より詳細な制度的枠組みの主要なポイントは下記の通りである。
l イタリア住民にオンライン賭博を提供する場合には、AAMSによるライセンスを必要とし、これはイタリア外のEU諸国からサービスをイタリアの住民に提供する場合も同様となる。ライセンス料は、1回払い36万€(付加価値税込)でライセンス発行と共に支払う必要があるが、発行時期に拘わらず、全て2016年6月末に失効し、再申請が必要となる。ライセンスを取得できるのは欧州経済区域(EEA, EU並びにアイスランド、ノルウエー、リヒテンシュタイン)の事業者で、外国事業者にも直接ライセンスは付与できる。但し、規制当局に対する保証金(150万€)拠出と監査会社による財務・技術等に関する証明書が必要となる。
●オンライン・ゲーミング自体はほぼ全てのゲーム種を含み、かつ段階的にこれを増やしている。
●ライセンス要件は厳格で、1)過去150万€以上の欧州での売上実績があること、2)高い技術力、良いサービスを提供できること、3)株式会社であること、4)信頼おける経営陣であること、5)欧州内に本拠を有し、技術支援体制があること、6)36万€を技術管理料としてAMMSに支払うことというものであった。
●尚、イタリア住民に対するオンライン賭博の提供は、専用のプラットフォームからのみ可能で、全て規制当局たるAAMSが運営する中央システムにリンクされ、全ての賭け行動は、記録され、モニターされ、トレースされると共に、リアル・タイムで課税されることになることが大きな特色となる。ソフトは当然認可ラボでのテストが必要になると共に、外国にライセンス事業者がいる場合も、このAAMSの中央システムにリンクされることが要件となっている。尚、ライセンスを受けていない主体が外国ベースのプラットフォームからイタリア住民に賭博サービスを提供することは禁止されている。
●2010年にはサーバー管理型のVLT(ビデオ・ロッテリー・ターミナル)設置が認められ、規制当局となるAAMSの中央システムに全ての機械をリンクし、遠隔的に管理できる手法が採用された。原則できる限り大きな規模の施設とし、施設規模と設置可能機械台数を規制により制限する模様だが、ゲーミング・アーケードやベット・ショップあるいはビンゴホール等に、電子式機械ゲームが設置されつつあり、イタリア中にミニカジノが生まれつつある。一方イタリアでは、歴史的に陸上設置カジノは4ヶ所しか存在しないわけで、この制度そのものがおかしくなると共に、お互いに競合し、顧客を取り合う状況になりかねない。
この様に、イタリアでは、
① ネット賭博に対する基本的施策は、自国民保護に徹し、全てのライセンス・サーバーを規制当局がオンラインで集中管理し、記録を取り、モニターし、自動的にリアル・タイムで課税する考えを取っている。規制当局によるオンライン・リアルタイムでの全数集中管理・監視方式は、他国では例が無く、確かに、監視費用を下げ、完璧に不正やいかさま、脱税を根絶できる考えになりうる。一方、ライセンスを取得していない主体が、イタリア国民にオンライン賭博を提供することは違法だが、国民がもしかかる賭博を選択しても、これを罰する効果的な手法は無い(違法サイトのブラック・リスト化やサービス・プロバイダー経由違法サイトをブロックするという手法は実践されているが、その効果に関する公開データは無い)。
② イタリア方式は、EUからの事業者の参入はイタリアにおけるライセンス取得を対象に オープンにし、その行動は厳格に規制の対象にするが、それ以外のサイバー世界からの自国民に対する賭博提供は禁止するということになり、欧州における一つのインターネット賭博規制モデルを提供することになったといえる。