インターネット賭博は、事業者が保有する特定のサーバーから、サイバー世界に発出されている。ならば、このサーバーを専ら管理の対象として、規制当局に中央管理コンピューターを設置し、管理下にある事業者のサーバーとオンラインでリンクさせ、常時監視と全てのデータを共有することで効果的な監視が実現できるという考えが生まれてきた。この場合、異常な行為の監視も、自動プログラムが実施する。ブロードバンドや光ファイバーの普及により可能になった手法でもあり、インターネット事業者を規制し、監視し、かつ管理する効果的な手法として、今後定着する可能性が高い。単なるサーバーやソフトウエアの認証や事後検査・監査だけに留まらず、実際の運営行為自体を常時リアル・タイムで自動的にモニターすることになる。
これは、下記を意味する。
① 免許を取得した主体となるインターネット賭博事業者の行動と顧客との対応(賭け行為及び決済行為)を、常時、かつ確実にモニターし、電子的に記録する。利用される機材、ハードウエア、ソフトウエアは全て事前の認証を受けることが前提になる。ソフトウエアは全てソース・コード(設計図)を提出し、その内容につき精査を受ける。これは完全な監視・管理体制のもとに、一部サーバーを自由なサイバー世界から切り離し、管理下におくことを意味する。
② よって、サーバーは規制機関が物理的に検査・監査できる国内に設置させ、必要な場合、常に検査できる体制がとれることを前提とする(イタリアは国外にサーバーを設置させることも認めているが、保証金積み立て、第三者監査人の指定、オンラインによる規制機関による管理と監視がその前提となっている。オンラインで常時監視すれば、例え国外でも規制の効果はあるという考え方をとったことになる)。
③ 全ての顧客データと顧客との取引(ゲームの結果、顧客勘定の設定と金銭移動、決済)を電子記録にとどめることにより、対顧客との取引を事後的にその全容をトレースすることが可能になる。これにより不正、いかさま、ソフトの改ざん等を全てチェックできると共に、適切なゲームであったかを検証できることになり、問題が生じるリスクを限りなく少なくすることができる。例えば、一定額以上の不可解な資金の流れ等はマネー・ロンダリングのリスクとして把握できることになる。
④ 売上げ、胴元の収益は、正確に記録され、自動的に課税対象額が確定するため、脱税はまず起こりえない透明な仕組みを構築することができる(賭け金額と勝敗を正確にかつリアル・タイムで捕捉することにより、課税額が取引ごとに確定し、その総計値が一定期間における納税予定額になる。これを規制者と事業者双方がリアル・タイムで確認している以上、脱税が起こる可能性はゼロに近い)。
⑤ 規制当局に対しては、全ての取引データを電子的に開示し、これらを事業者と規制当局が共有することになる。このデータを外部から改ざんすることは不可能に近い。またもし改ざんすれば、規制当局が保持するデータと異なることになり、直ちに違法行為がばれてしまう。
⑥ 事業者が財務的に健全である限りにおいて、顧客と事業者との間で、ゲームの公正さにつき、問題が生じるリスクを可能な限り縮減することが可能になる。またもし顧客との間で問題が生じた場合には、取引記録をトレースすることにより、事の是非を検証できることにもできる。
⑦ 顧客から見た場合、ネットの世界は全くの自由な規制の無い世界になり、誰が適切な事業者、公正なサイトであるかを予め判断することはできない。一方特定国の領域内において、明確に、専用サーバー(dedicated server)、専用プラットフォーム(dedicated platform)を設けさせ、一国限りの市場を対象とし、オンライン・リアルタイム監視を実施することができれば、確かに安全性、健全性、公正さは確保することができると考えられる。この前提をとりつつ、平行的に違法サイトをブラックリスト化し、ブロックすることが一部欧州諸国では実践されている。
この様に、技術の進展により、インターネット事業者を規制し、監視する手法は、効果的、効率的になりつつある。完璧にコントロールできる仕組みを構成できた場合、インターネット・カジノの健全化と安全化が進むことになる。市場の成熟化と共に、規制や制度の考え方も進化しつつあるということであろう。