コネチカット州では商業的賭博は原則禁止となるが、1939年以降、教会等の有資格の非営利団体はその活動資金を調達する為に、ビンゴ等のゲーム賭博を主催することが例外的に認められてきた。また、1972年以降はロッテリー、1976年にはグレイハウンド競技、ジャィアライ等も制度的には例外措置として認められている。商業賭博としてのカジノ施設は、未だ認められているわけではないが、現実には連邦法に基づき、州政府と二つの先住民部族との間に協定(Compact、コンパクト)が存在し、これら協定に基づき設けられた全米最大ともなる二つの巨大な部族カジノ施設がコネチカット州に存在する。かつこれら部族との契約が州の制度の基本的な枠組みになっているという特徴がある。
よって、ゲーミング・カジノの制度的根拠は1993年に成立したマシャンタケット・ペコー部族との協定並びに1994年のモヒガン部族との協定になる(まず協定があり、その後制度が制定された)。ペコー族は1986年ビンゴ・ホールを開設したことがその端緒になるが、(州政府との協定締結前の)1992年にフォックスウッド・リゾートカジノを開業、その4年後、モヒガン部族はモヒガン・サン・カジノを開業している。フォックスウッドは単体施設としては世界最大のカジノになる。またこれら2施設はボストンとニューヨークの中間地点に立地し、巨大人口地域が至近距離にあり、他に競合施設が存在しなかったために、大きな成功をおさめた部族カジノの典型でもあった。
州内での許諾賭博に関する法制度は州憲法第226章に纏められているが(Conneticut General Statues Chapter 226)、部族との協定自体に州政府と部族の権利義務関係や監視・監督の在り方が規定されており、これが制度を支える補完的な枠組みとなった。規制・監視の機関は当初は州歳入庁の特別歳入局(Division of Special Revenue)が担っていたが、2011年以降、その権限は、州消費者保護省に移管され、同省のゲーミング局(Gaming Division)が担っている。この消費者保護省にゲーミング政策委員会(Gaming Policy Board)が設置され、ゲーミング局を監督し、州内の多種多様な賭博行為の全てを規制する主体となった(委員は5名、知事による任命で議会の承認を得て4年の任期となる)。ゲーミング局は、政策委員会と一体となり、規制と監視、一部法の執行を担い、その局長は知事による任命職となる。委員会の主要な所掌業務と権限は、カジノを含むが、カジノだけではなく許諾賭博全般になる。即ち、①賭博種に拘わらず、州法に規定された関連主体に関するライセンスの付与、停止、はく奪、②当該主体が担う施設、財、サービスに関連する契約等の認可、認証、③競技等の場合の日程設定、④ライセンスに係る罰金賦課、⑤許諾できうるパリミュチュエル賭博の認可、⑥場外賭博の在り方に関し、特別歳入局へのアドバイス、⑦特別歳入局を支援し、規則詳細等の策定、⑧賭博行為にかかわる提訴等の取り扱い、公聴会の開催、⑨許諾賭博の目的と計画に関し知事に対し、アドバイスを与えるなどになる。部族カジノに関しては、協定(コンパクト)に基づき、①規則と手順の制定と執行、②関連しうる主体(個人、組織、サービス・機械ベンダー)の背面調査とライセンス付与、また拒否された人、不満不平の場合の措置(実態は州政府当該部局の許可を得た上で、部族に対し、ライセンスの申請がなされ、部族がこれを交付することになるが、州の許可が無ければ、何もできない仕組みになっている)、③機械、システム等の認証、④定期的な監査検査等を担う。部族カジノに関しては、税収を確保し、消費者を保護し、健全なゲームが提供されることを担保するために、関連しうる民間主体の認証、ライセンス付与と、監視・検査等、必要な側面は州政府が手当し、措置するという考えになる。
一方、ゲーミング局は①賭博規則部(競技賭博、場外賭博、部族との協定に基づくライセンス並びに規制機能)②調査・審査、技術サービス部(会計監査、データ処理等)、③警備部(規制に関し内部的な警備や監視、背面調査や必要な調査等、日常的な支援を担う)、④計画・研究部(ライセンスに関する公聴会、社会的経済的影響度の評価分析等)、⑤総務部(局の活動の一般的支援サービス)という5つの部から構成されている。また法の執行は、このゲーミング局に特別警察官が配置され、州公共安全省の州警察局の許諾賭博調査ユニット(Legalized gambling investigative unit, Division of State Police)と共に共同して違法行為摘発にあたるという面白い仕組みになっている。
この様にコネチカット州の部族カジノ規制の特色は、単純な部族の自治ではなく、州政府も積極的に規制・監視に関与しており、
① パリ・ミュチュエル賭博を含めた賭博全般の管理の中に、部族カジノも位置づけ、規制の対象にしていること。
② 但し、組織は簡素化され、ゲーミング政策委員会を判断主体としつつも、実質的にゲーミング局に規制と法の執行の全ての権限が集中し、限られた側面の規制・監視に徹している構図に近いこと、
にある。同州のカジノからの税収は、協定に基づき、当初スロット粗収益の10%であったが、1992年部族要請により機械台数を増やしたことの代償として粗収益の25%となり現在に至っている。2011~12年レベルでこの収益は3.25億㌦になる(その内訳は、フォックスウッズカジノが1.53億㌦、モヒガン・サン・カジノが1.72億㌦である)。