ゲーミング関連税収と売上税はネバダ州の総税収の約2/3を占める。よって、観光並びにゲーミング産業は同州にとり、最大の産業でもあり、関連する税収が、州の経済全体に及ぼす影響は極めて大きい。同州のゲーミング関連課税の特色は、ゲーミング・カジノ施設間の自由な競争を前提としているために、極めて低率、かつ競争的な税制になっていることにある。但し、過去の歴史的経緯により、売上と資産に対し、複数の税種が複雑に賦課される構図となっており、極めてわかりづらい。即ち、主要な税としては、1)粗収益(総賭け金から顧客勝ち分を差し引いた額で、税・費用控除前の売上額に相当する)に対する逓増率課税、2)ゲームに使用する機械(スロット・マシーンないしは類似的な電子式機械ゲーム)一台毎に賦課される四半期税及び年税、3)ゲームに使用されるテーブル一台毎に賦課される四半期税及び年税になる。その他、課税対象が顧客や消費者となる税も存在する。内、圧倒的に大きいのは粗収益課税(売上に対する課税)である。いずれも、州税の場合には、法の執行機関であるゲーミング・コントロール・ボードが税の徴収行為をも担うことになる。
各々の税の概要は下記の通りである。
① 粗収益課税:
粗収益課税は、費用控除前の総売り上げ(総賭け金から顧客勝分を差し引いた金額)に対する課税となり、総粗収益のレベルに応じて段階的に税率が決まる。ネバダ州は、米国でも最も低い税率になる。制限無しライセンスの場合の税率は、1ヶ月の間の総粗収益の最初の5万㌦まで3.5%、上記に加え、次の総粗収益8万4000㌦まで4.5%、上記に加え、総粗収益13万4000㌦を超える場合、6.75%という逓増率となる。月単位で支払い、前月分を当月24日迄に納税する。
② 特定資産(機械・テーブル)課税:
機械ないしはテーブルを15台以上設置する事業者は無制限ライセンス・テーブル・機械税が課税される。機械税は、機械毎に年賦課金250㌦、また四半期毎にライセンス料20㌦を各々前納として徴収する。また、テーブル・ゲーム税も前納で、年賦課金として1テーブルあたり$100、四半期賦課金として$12.50となるが、保持するテーブル数が増えると逓増し、年$1000/テーブル、四半期$580/テーブルまで上がる。一方、テーブル・ゲームの設置がなく、機械の設置数が15台以下の事業者は制限付ライセンス・テーブル・機械税の賦課対象となり、年賦課税は機械毎に$250、四半期賦課税は台数に応じて$81から$121になる。
③ ライブ・エンターテイメント課税:
一定の条件のライブ・エンターテイメントを提供する場合、入場料・飲食料等の合計につき10%が課税される(負担は消費者に転嫁されることになるため、事業者経由消費者が負担することになる)。
上述の通り、通常の事業者の場合、基本は粗収益課税率6.75%ということになるが、これに加え上記の通り、様々な州税と共に郡、市町村が一部課税することになり、平均すると粗収益全体の1%位実効税率が上がる(即ち約7.75%程度になる)。尚、30日以内に所定の税を支払わない場合、ライセンスの返却義務があり、ゲーム運営は即刻停止処分となる。毎月の納税額はゲーミング・コントロール・ボードが公表しているとともに、年度毎の分析報告も公表され、情報公開のレベルは高い。
2011年度に実現した州全体のカジノ施設の売上(総粗収益、総賭け金から顧客勝ち分を差し引いた税、費用控除前の売上)は106.34億㌦に達するが、この内の86.2%がラスベガスを含むクラーク郡からのものになる。同年に徴収された粗収益税等の総額は、8.53億㌦に達し、その86.4%がクラーク郡からであり、ラスベガスを含むこの郡が突出して、納税額が多い。この内訳は、総粗収益に課される粗収益課税が6.52億㌦(76.4%)、ライブ・エンターテイメント課税が1.18億㌦(13.9%)、四半期制限無し機械税が1227万㌦(1.4%)、四半期テーブル税が667万㌦(0.8%)、四半期制限付機械税は841万㌦(1%)、年機械税4743万㌦(5.6%)、年テーブル税は258万㌦(0.3%)である(出所:GCB~Information Sheet 2011)。
これら税収の使途は、州政府の一般財源、州の教育支出費、依存症患者対応プログラム支出費、郡・市町村の一般財源などに用いられている。州政府財源の主要部が、ゲーミング産業の売上に対する課税に依存しているという状況は、成長期には問題ないが、逆に、成長が鈍化した場合には、深刻な歳入欠陥に陥るリスクをも抱えることになる。