もしゲームに使用される用具や機械、システム等に意図的な改ざんや操作が行われ、顧客が一方的に不利になるような扱いを受けているとすれば、それは健全なゲームとはいえず、顧客が知らずに騙されているだけでしかない。この場合、顧客を被害者とする詐欺に等しく、確実に施行者が収益を得ることができる。例えば、犯罪組織がかかる行為に関与していたとすれば、顧客をだまし、かかる行為から確実に収益を上げ、得られる違法な収益が更なる犯罪を引き起こすことに繋がるわけである。かかる行為を防止するためには、①使用される用具、機械、システム等は、顧客にとり公平、公正となる一定の共通的な技術的規範や技術標準を規範として定め、形式認証の対象とすること、②認証を受けた用具、機械、システム等が製造され、流通し、使用される過程で改ざん、修正を加えられない手順や確認・監視手法等を定めることが必要となる。少なくとも、顧客は提供されているゲームが公正なものか否か、不正が行われているのか否かを知ることはできない。典型的な情報の非対称性があることになる。このギャップを埋めるために、規制機関や独立した第三者が中立的な立場から、公平性を担保するために、これらを検証する必要がある。このために、ゲーミング・カジノに用いられる用具や器具、機械、システム等は、全て規制当局が定める一定の技術判断基準・技術標準を満たすことが前提となり、その製造、販売、使用は全て規制機関の認可を必要とする。慎重かつ詳細な規制を前提とするのは、機械やシステムは、表面からのみでは不正、ねつ造されていることを普通は理解することができないからである。
規制のポイントは、下記にある。
① ゲームに使用される用具や器具、機械、システム等に関しては一定の技術認可基準や技術標準を規制機関が定め、全てこれに準拠することが求められる(あるべき射幸性判断基準等を含む)。かつ、規制機関ないしはその代理人となる指定認証機関がその確認、認証、検証をする。
② 提案されるゲーム自体が、使用される用具、器具等と共に全て規制機関による認証の対象となる。機械等の製造に際しては予め形式認証が要求され、その流通、使用に関しても個別の認証手続きが必要となる。また電子機械等のプログラムは所定の技術認可基準や技術標準に準拠しているかがチェックの対象となる。許諾後も、何らかの事情により仕様を変更する場合には、再度許諾が必要となる。全てのゲームは認証の対象で、認可されないゲームは顧客に提供することはできない。
③ ゲームや運営に直接的、間接的に係わりうる新しい技術や、機械、システム等が導入される場合にも、必要と判断される場合、規制機関による認可の対象になる。
④ 技術判断基準等は規制機関が定めるが、実際の用具、器具、機械、システム等の検証行為そのものは、規制機関が許諾を与えた第三者たる指定認証機関にこれを委ねることができる(全てを規制機関自らがやる必要性はないからである)。
尚、機械化、システム化等技術の進展や進化は極めて早く、これらがどんどんゲーミング・カジノの分野に入りつつある。コンピューターやアミューズメントの世界との境界も限りなく薄くなり、通信、ネットの技術進化に伴い、これらがゲーミング賭博の世界にも入ってきていることを意味する。今後、遊びの世界と賭博の世界の境界がますます不透明になり、新しいゲームや技術などもゲーミング・カジノに導入される様になる。また、逆にゲーミング賭博の分野における技術の進展が、アミューズメントや一般のエンターテイメント分野に及ぼす影響もありうる。同時に運営の監視にもシステム等が導入されており、スイスでは法律上、AWACSと呼ばれる運営全体管理のシステム構築が施行者に義務として課され、この端末を規制機関が施行者と共有する形で、運営の監視とモニターに参加する仕組みを制度の前提とした。ゲーム機械や全ての運営システムに関わる全データを規制当局が情報共有することにより、不正や違法行為を同時に防止できることになる。規制と監視をより効率化しようとする試みである。