オセアニアにおけるゲーミング関連の税金は下記四つの分類から構成されることが通例である。尚、豪州では、連邦税と収税の二つがあり、後者は当然乍ら個別の州毎に異なり、同じではない(ニュージーランドでは全てが単一の国税となる)。
① 物品・サービス税(GST、General Service Tax,豪州では連邦税、ニュージーランドでは国税):
豪州連邦政府はカジノにおける顧客の賭け金行動を顧客による消費行動と見なし、胴元の売上げ(総粗収益)に対し、10%の物品サービス税(GST)を課税することを2001年以降実施している。これが連邦政府の取り分となる。尚、顧客に税を転嫁できない税の構図となるために、税率が増える場合には州税となるゲーミング課税(粗収益課税)の税率を一部調整して、減額できる措置が各州によりなされている。物品・サービス税はカジノとは関係のない一般課税である。様々な政策事由により増税される可能性もあり、そのあり方次第では、カジノ施設は大きな影響を被り、その収益は大きく削減しかねないからである。ニュージーランドでも同様の考え方に基づき11.11%の物品・サービス税(GST)がカジノの売上に対し課税されている。
② ゲーミング税(Gaming Tax, 豪州では州税、ニュージーランドでは国税):
豪州では、州政府取り分となる州税で、胴元売上(粗収益)に対し課税され、連邦課税となる①に追加して賦課される。一般顧客からのゲーム粗収益と国際コミッション客と呼ばれる海外誘致VIP顧客(プレミアム顧客)に係わる粗収益に異なった税率を適用する事例が多い(海外VIP顧客誘致を推進する為に特定顧客からの収益に対する税率を低く設定する施策になる)。豪州では税率は8%から35%までと、かなり幅が広く、テーブル・ゲームや機械ゲーム毎に税率を変えている場合も多い。一方ニュージーランドではこれは国税、単一税率課税で税率は4%となる。税率がこれら国、地域毎に異なるのは、当該地域における市場規模や施設規模に伴う期待税収の考え方が異なるという理由による。また税率は固定ではなく、経済実態や市場の動向に基づき、随時変更されている。税収がインフレスライド制になったり、施設毎に税率を変えたりする等、多様な考え方が採用されている。
③ 地域便益税(州税)ないしは賭博依存症賦課金(豪州では州税、ニュージーランドでは国税):
地域便益課税はCommunity Benefit Levyと呼ばれ、売上(粗収益)に対し、1%から2%を賦課する固定率課税になる。主に地域における福祉や地域社会に対する還元、あるいは依存症患者対策等の財源にしている。この考え方は州によっても異なり、オーストラリアでは、地域貢献税の対象となるカジノ施設は13施設中8施設になる。即ちかかる考え自体が存在しない州も存在する。勿論これには、当該州の市場構造や、住民対応等の政策の違いが背景にある。また、対象をカジノではなく、その他の賭博類型に税源を求めたり、あるいはカジノを含めた賭博税収の一部をかかる使途に振り向けたりするなどの考えをとっている州もある。尚、多くの場合、これら課徴金はこの目的の為に創設される信託基金勘定に全額振り込まれ、信託人によりその使途が定められる(事務機能は省庁が担うが、信託人は、大臣、政府代表、地域社会代表等の利益代表から構成され、年度毎にその支出先を決定する手法をとる。あるいは財団等を設け、信託基金の運用を全て委ねる等という手法も実践されている)。
ニュージーランドでは、従来事業者の自発的拠出により地域対策や依存症対応財源としていたが、強制力がないため、これでは機能しなかった。2003年賭博法に基づき、新たに依存症対応課徴金(Problem Gambling Levy)が創設され、あらゆるギャンブル行為から、その行為が依存症にもたらすインパクトの度合いに応じてギャンブル種目毎に課税することが実践されている。この課徴金は、政府内国歳入庁が徴収し、国としての総合的な政策の中で政府厚生省その支出を考慮するというスキームになり、3年毎に実態を反映して、政令により賭博種毎の課金率を変更している。
④ その他公租公課(州税)
事業者と政府の特定的な取り決め等により、社会貢献やインフラ施設の維持等の特定費用負担が義務とされたり、あるいは政府機関や規制当局による監視等の費用を分担せしめたりする考え方になるが州毎にその考えは異なる。ビクトリア州は当初の運営期間5年に亘り、カジノ監視税という形で規制当局や公安当局の最初の立ち上がり費用を徴収したが、一定期間後に終了する前提をとった。ニュー・サウス・ウエルズ(NSW)州はアップフロントで巨額のライセンス費用を徴収したが、当初の一定期間における監視費用をこの中に含むという考え方をとった。一方、ニュージーランドでは、恒常的に規制機関に係わる実費を施行者に年度毎賦課し、費用に充当するという考え方を採用している。
オーストラリア各州では、賭博税収は、一般財源として歳入処理するが、税収の過半はその使途を医療やその他の社会目的に予め特定化して支出されることが多い。また、州毎の事情により、課税率は微妙に異なり、州毎に課税のあり方にも特性がある。粗収益に対する実効税率はオーストラリアでは24%から33%、ニュージーランドでは27%程度になり、かなり高いことが特徴的である。