国が施設総数と区域数とを限定し、地方公共団体による申請を募る場合、明らかに多くの地方公共団体が申請と要望を出してくることが想定される。財政負担の無い観光振興や地域活性化のための効果的なツールになりうるためである。この場合、国(主務大臣)が、限られた数の地点・区域を選定せざるを得なくなる。そこで、国が公平かつ透明性の高い選定判断基準と手順を取り決め、区域(地方公共団体)を選定するという考え方が必要になる。国と地方公共団体との関係をどうデザインするかは、制度上の重要な選択肢となるが、超党派議員連盟が提示した考えは概ね下記手法に基づき、区域(地方公共団体)を「指定」する。
具体的手順としては、まず国(主務大臣)が基本的な方針(「特定複合観光施設区域の区域指定に関する基本方針」)を示し、区域指定を欲する地方公共団体より、政策提案・企画提案を募り、当該地方公共団体が、地域の合意形成を図り、既存の諸政策との整合性を調整し、一定の案を提示する。この中から国が最も適切な地域ないしは区域(特定複合観光施設区域)とこれを提案した地方公共団体を「指定」し、この区域のみにおいてカジノ施行ができる仕組みとするわけである。この場合、指定を受けた地方公共団体は、当該区域の開発を主催する主体ではあるが、別途この具体的な施設群の開発、投融資、整備、運営を担う民間事業者を公募により選定し、当該民間事業者によるリスクと費用負担により、その実現(整備と運営)を図ることになる。対象は単純なカジノ施設ではなく、複合観光施設(IR, 統合型リゾート)となるため、如何なる施設をどう作るのかは、地方公共団体が自らのビジョン・構想・要件を策定し、これを実現する投資提案を民間から募ることになる。また、この民間事業者は別途、国の規制機関に免許を申請し、その適格性に関し審査を受け、免許を取得して、初めてカジノ施設の「施行者」となることができる。実際に投融資し、カジノ施設を実現する主体は、当該地方公共団体が公募により選定すればよいので、地方公共団体自らが財政負担によりかかる施設のための資金調達を行い、当該施設を整備するということではない。
この様に、カジノを含むIRを実現するために選定すべき対象は、地点(地域、関連する地方公共団体)と事業者(当該地域において開発行為を行い、投融資・運営行為を担う民間事業者)になり、どういう順序で何をどう決めるかを予め制度の中でしっかり定めておかない限り、確実に混乱が生じる。例えば、特定の民間事業者が予め地方公共団体とタイアップし、この官民共同体が、国に対し、設置申請を求めるという一段階の考え方もあれば、地方公共団体が提案する政策の優劣を国が判断し、国が地方公共団体をまず選定し、その後選定された地方公共団体のみが公募により民間事業者を選定するという二段階手順で考える手法もある。前者の場合、地方公共団体と民間事業者の癒着や国が認証していない民間事業者が、公募手続きを経ないまま地方公共団体との緊密な関係が固定してしまうこと、確実に「当選確実性」の高い自治体のみに民間事業者の関心が集中してしまうこと等の不都合が生じかねない。よって、区域数を限定する場合には、国が地方公共団体・区域を選定するプロセスをまず先行させ、その後選定された地方公共団体が公募により民間事業者を選定するという二段階手順を採用することがより適切となる。不祥事が起こるリスクを確実に減らすことができるからである。これに加え、国による民間事業者の適格性認証・免許付与の手順が入るため、実質的には三段階で構成される。即ち、第一段階は国による地方公共団体の指定で、考えとしては国による「設置許可」に近い。第二段階は、地方公共団体の基準・判断に基づき、公募により実施を担う民間事業者の選定になり、一種の「投資誘致・提案公募」に近い。第三段階は、国が当該民間事業者を認証する手順となるため、一種の「運営許可」に近い考え方になる。まず場所(区域)を決め、その後事業者を決め、最後に事業者の適格性を判断するという手順になる。
区域(特定複合観光施設区域)とこれを設定する地方公共団体の指定に関しては、公平かつ公正な選定に係わる手順と、透明性のある選定判断基準を法律上明記する必要がある。この場合、考慮されるべき選定判断基準とは、例えば、①法目的への準拠、②関連地方公共団体の中長期計画との整合性、③当該地域における議会同意等の基本的合意形成、④複合観光施設としての基本概念や集客戦略・施設計画、⑤当該区域における社会的影響度評価等になるのであろう。国による評価の焦点は、あくまでも政策の在り方になる。かつまた、国による選定手続きは、政治的、行政的な恣意性が働かないように、第三者委員会を選定評価に絡ませる等して、できうる限り、中立的かつ透明な手法で選定がなされることが好ましいといえる。地域選定は、当該地域にとっての経済メリットが極めて大きく、政治的恣意性や何らかの圧力により決められるということが零とはならない為に、手順や判断には特段の透明性と説明責任が求められることになる。如何なる主体にどう施行をさせるかに拘わらず、施設数が限定される場合、設置場所の選定は大きな課題になってしまう。当該地域に大きな影響をもたらすことは必須となってしまうため、地域社会における合意形成や、様々な地域における施策との整合性や調整等も必要な前提条件となる。