2013年9月9日(月)、徳島県鳴門市 ルネッサンスリゾートナルトに於いて、「鳴門観光の未来を考える国際フォーラム」が開催されます。当学会の谷岡一郎会長も登壇予定です。なお、お申込みにつきましてはこちらをご覧ください。
鳴門観光の未来を考える国際フォーラムのご案内
最新トピックス
369. 公営賭博改革: ④ マーケッテイング・売り上げ拡大施策
経営改革の要点は冗費を削る(支出を極力減らす)だけでは無理で、支出を減らしつつも、より積極的に収入を増やす努力や工夫を効果的に併用することにある。公営競技であってもこの本質は全く変わらない。但し、ことが賭博行為である場合、かつ経営主体が地方公共団体である場合、賭博行為を推奨することが適切な公共政策といえるのか、公的主体は賭博行為の主催者として如何なる立ち位置にあるべきかという疑念が常に存在し、大胆な施策を取りにくいなどの事情がある。これが明確な制約要因となり、経営改革が実現できない背景ともなっている。
これは下記背景があるからである。
① 賭博行為は本来抑制的であるべきで、公的主体自らが賭博への消費を募り、賭け事を推奨することは好ましくないとする考え方がある。かかる事情により、開催日や開催条件などの経営の基本的な条件は、国がこれらを規制しており、主催者たる地方公共団体が自分の意思で、より効果的に開催日や開催日数を自由に増やしたりして、集客効果を上げ、結果的に収益を上げることは単純にはできない。いうまでもなく、開催日を効果的に増やせば、当然それだけ売り上げは向上する可能性がある。
② 賭け事の商品は、馬券や舟券などになり、その賭け方、賭け金で人気が決まり、売り上げが決まる。様々な賭け方が存在するが、この商品設定も自由ではなく、規制により厳格に規定されるため、限定的な商品を限定的な形でしか販売できていないということが現実になる。商品を増やし、顧客にとっての魅力を増せば、当然売り上げ増は期待できるが、射幸心を煽る行為を公的主体が主張することに繋がり、事は単純ではないということに尽きる。
③ かつ地方公共団体が主催者である場合、民間主体と異なり、(税金を用いて)積極的な売り上げ増大や、売り上げを増やすためのマーケッテイング施策はとりにくいし、できないという事情もある。制度上は地方公共団体がなす営利事業でもあり、本来民と同様の行動がとれるのだが、そううまくいかないという事情になる。
では如何なる手法や可能性があるのであろうか。公営競技を改革するためには、思い切った戦略と行動が必要であり、積極的な市場開拓により市場を育て、健全な形で顧客を公営競技に振り向かせることが必要である。たとえば下記のごとき手法がある。
① 競技自体を魅力あるものにする:
競技自体のゲーム性、面白さを工夫し、競技への興味がわく仕掛けが必要となる。高い広告宣伝費をかけ、若者に人気のある著名人を前面に打ち出すのも一つの手法だが、費用を縮減しながら老若男女が集まりやすい施設とし、サービスの改善、施設自体の魅力やコンテンツを工夫する余地はまだ十分ありそうである。
② 賭け方を面白く、魅力あるものにする、多様な賭け方、多様な商品をそろえる:
賭け事のあり方は、単純な賭け方で、わかりやすいこと、多様な賭け方があることが肝要で、商品数を増やし、顧客にとり多様な選択肢(多様な賭け方、多様な商品)があるほうが魅力を増し、売り上げは確実に増える。この施策が、射幸心を煽る行為になるとも想定できず、ある程度の裁量権を現場に落とし、選択肢を増やす(商品構成を増やす)考えがあってしかるべきと判断される。
③ 賭け方の手法を単純に、アクセスや手法を限りなく広く、単純化する:
インターネットやモバイルを活用した投票券の販売は、投資費用を限りなくかけずに、販売ネットワークを限りなく増やすことに繋がる。セールスポイントが個人化され、よりアクセスがしやすくなることは、効果的にマーケッテイングや販売を実施できる可能性を示唆し、確実に収益を増やす効果をもたらす。いかにアクセスを単純化し、売りやすくするかが、販売を増やすことになる。この試みは既に行われているが、使い易さ等の観点から、まだ課題が多い。
④ 既存顧客に対するより積極的なマーケッテイングを実施する:
既存の固定客たるファンへのきめの細かいサービスや顧客還元サービス等、今ある顧客を引きとめ、再度来させるような魅力的なサービスや動機づけを提供する必要がある。マーケットデータを分析し、顧客セグメント毎に、より効果的なマーケッテイングをすることにより、費用対効果が上がり、収益を増やす可能性が高まる。新たな顧客層を開拓する努力と共に、少なくとも既存の顧客に対しては、より質の高いサービスを提供することも肝要であろう。
⑤ 顧客サービスを高める、より質の高い、きめの細かい顧客サービスを提供する:
来訪する顧客に対する施設の質を向上させ、顧客に対し、飲食や付帯サービスも含めてより質のサービスを提供する工夫が競技全体の魅力を高める。開催の時間帯に応じ、より決めの細かい顧客ニーズにフィットした工夫が必要であろう。
改善の余地はまだ十分にある様にも思えるが、現行制度は、施行者による大胆な改革へのアプローチを認める構図にはなっていない。公営賭博に関する過去の制度的枠組みやしがらみに囚われない発想や行動力が求められている。この為に、制度全般のあり方を見直すことも重要な政策的選択肢の一つになる。
Ⅹ我が国における新たなゲーミング賭博法制(基本)
368. 公営賭博改革: ③ 資産やサービスのバンドリング・プーリング
地方公営競技では、競技を主催する権利を国が指定する地方公共団体に付与し、地方公共団体が整備した施設で競技が行われる。この施設に顧客が行くことにより、初めて賭博行為に参加できるという仕組みになる(勿論、これを補完する枠組みとして、場外での投票券販売や電話投票があるが、販売力強化の為に、投票券の販売を外延的に拡大する考えになる)。これは結果的に当該自治体に一定の市場独占権を付与することを意味し、当該地方公共団体が競技を担うことのできる施設群を自治体が整備し、特定の市場域を前提として独占的に、賭博行為を主催するというビジネスモデルになる。この点、当初から制限の無い、広域的な市場を前提とした中央競馬やTotoとは若干考え方が異なる。
この地方公営競技が成立する前提とは、①至近距離に競合相手がおらず、一定の地域内の顧客をほぼ独占的に抱えることができること、②当該地域内に独占的な施設やシステムを保持することが通常で、これにより自己完結的にビジネスが成立できることにあった。一定市場に安定的な需要が存在し、これに応じた売上げがあり、個別事業による売り上げから控除される金額が総開催費用を大きく上回る状況であれば、このモデルはうまく機能する。一方、個別の事業毎に全ての施設やシステムを固有に抱え、販売も運営も独自に行う場合、やはり、開催費用は高額にならざるを得ないという事情もある。例えば、競技におけるオッズの算定は、支払い・収益が認識されると同時にコンピューターで処理され、大型画面や端末機器に配当額が掲示されるが、巨大なシステムとなり、その資本投資や更新投資も馬鹿にならない金額になってしまう。これら減価償却や開催経費を十分賄える収入があれば問題ないが、収益が減り、開催費用を縮減することが望まれている時代には、個別の開催主体が高額の資産を抱え込む事は、固定費用や減価償却負担がかなりのしかかることになり、必ずしも効率的な考えにはならない。巨大な設備やシステムは、常に効率的に利用されているわけではない。利用時間は限定されるため、システム自体が十分に活用されていないという事情があるからである。
公営競技は、地方自治体がなす営利事業とはいえ、じり貧になればなる程、何らかの合理化や効率化のための知恵や工夫が生まれてくる。競輪、競馬、オートレース等の地方競技では、一部の先行する自治体同士が、グループ化し、①自ら資産を保持せず、第三者に資産を保持させ、使用料のみを支払うこと(高額な資産を保持しない)、②あるいは複数の自治体間で、資産を共有化したり、タイム・シェアリングにより、同じシステムを利用することにより、重複投資を避け、投資費用を縮減すること、②馬券や車券、舟券などの販売行為もこれをプール化し、共同で行ったり、お互いに販売を助けたりすることにより、費用をかけずに販売の効率化を図ること等の行動が散見されるようになった。資産の側面での最大効率化要因は、競技賭博運営の機関システムとも言えるトータリゼーターの共同利用化であろう。従来個別の競技場毎にかかるハードの施設とシステムが存在したが、高額な投資でもあり、投資負担はかなりの重荷にもなった。一方、複数の異なる自治体主催者が共同でこれらを投資し、共同で利用すれば、システム投資の負担を分割・分散することができる。この考えに基づき、地方競馬に関しては、2013年春に全国のシステムを統合する単一トータリゼーターが胎動した(全国の地方競馬場の運営を東京の大井競馬場に設置された一つのコンピューターで処理する仕組みで、タイム・シェアリングを実施していることになる)。
この様に、地方競馬の場合は、地方競馬共同センター、競輪の場合は全国競輪共同センター、競艇の場合には競艇共同センターが既に設立され、トータル・コストダウンへの動きが始まりつつある。販売の側面でも、売上拡大のために、①各地域間での同種施設連携による売上げ協力を図る動き(一つの場所で他の競技の投票券を販売する)や②異業種連携(同じ県が施行者である場合、同じ県の競輪施設において競艇の舟券を販売する)による施設の有効利用・売上げ拡大などが実施されている。市場をできる限りプール化し、顧客ベースを広げるという動きになる。一方、販売自体は、電話投票を通じた投票券の販売が、過半を占めつつあることが現実でもあり、コンピューターや携帯等をより効果的に用い、顧客の利便性を向上するあらゆる手段を駆使することにより、費用を上げずに、収益の拡大を期す様々な試みが実践されつつある。顧客にとってのアクセスや利便性を高め、顧客の満足度を高めることにより収益増を図ることは極めて合理的な行動になる。この現実を踏まえて、経営や運営の更なる合理化が必要になってきているといえる。
Ⅹ我が国における新たなゲーミング賭博法制(基本)
367. 公営賭博改革: ② 包括民間委託
公営競技は1990年をピークにその利用者数と総売上額は年々加速度的に減少しつつあり、ファン離れや、売上減少が止まらない趨勢にある。2000年代以降の様々な公営競技の不振は、多様な要因によるが、売上は減少しているにも拘わらず、開催費用は高止まりし、その売上収益で、交付金や開催費用を賄えなくなってしまったという単純な理由が苦境の大きな原因になっていた。選手の賞金から、掃除のおばさんまで、業務の割には費用や人件費は高く、周囲の環境が激変しているにも拘わらず、費用減の努力を怠り、収支を管理できなくなったつけがきたともいえる。2006年の公営競技関連法の改正は、特殊法人改革による公営競技関連特殊法人の法人形態の変更と共に、これら苦境にある公営競技を救うための経営効率化や、様々な支援策を制度上講じることがその目的でもあった。開催返上が続いていた一部地方公営競技を何とか持ちこたえさせる様々な施策が導入されたことになる。
この結果、例えば、特殊法人の企業化、一部類似的な特殊法人同士の合併、交付金の一部返済猶予(猶予であって、免除ではない)、より人気が出る投票券の販売を認めると共に、民間事業者に対する一種の包括的な委託の概念が一部公営競技で認められることになった。この考えは、苦境にあえぐ競輪競技から始まったが、その後その有効性が認知され、その他の公営競技においても、かかる包括的委託の考えを認める制度的措置がなされたものである。もっとも、包括委託といっても、完璧な責任委託制の考えではなく、一部法律上、公的主体の固有の業務とされた業務を除く業務の中途半端な委託であり、全ての開催費用を民間事業者が管理できる内容とはなっていない。この基本的な考えは下記になる。
① 開催費用のリスク・需要リスクは受託事業者:
競技を開催する権限や施行日数・時間等条件の設定は当然公的主体にあり、受託民間主体にとり自由な選択肢はない。年一定回数の開催がなされることを前提に、売上を推計し、需要リスクと開催に必要となる開催に関する諸経費のリスクを民間主体が取ることが基本になる。この意味では、受託事業者にとり収入を管理し、増大させる手段は限定的になるが、開催費用のリスクを取ることになる。費用の縮減は、努力し、実現できるだろうが、どう収入をどう増やせるかに関しては、民間事業者に対し、必ずしも自由な裁量権が付与されているわけではない。
② 自治体にとっては、固定収入保証方式:
地方公共団体の取り分は、予め協定でこれを定め、一種の収入保証方式的な考え方をとり、実際の収益、費用の多寡とは関係なく、年間を通じて固定的な収入を支払うことを民間主体が保証する(但し、大きな金額とはならない)。収入や売上を増やすあらゆる努力を民間主体はするであろうが、現実的には開催日数の上限がほぼ決まっており、開催回数を増やすことは無理で、個別の開催毎に顧客を増やし、賭け金を増やすか、投票券を場外で売ることを拡大するしか売上拡大の手法は無いことが現実になる。但し、これを管理することは、必ずしも単純ではない。
③ 法律上、自治体の固有業務は委託対象外:
一方費用に関しても、全ての費用が民間主体の裁量範囲になるわけではない。自治体固有業務として法令による取り決めがある業務(例えば選手関連費用、審判費用等)に関しては、自治体業務のままであり、これは言われたままの費用を民間事業者が負担することになり、受託事業者が自らの裁量によりコントロールできない領域になる。これ以外には、収益の一部を自治体に保証して支払う必要があるが、費用を縮減し、売上を伸ばせば伸ばす程、受託事業者の利益が増えるという仕組みになる。自治体固定収入方式は、売上が減少し、固定的な条件の下で費用を管理せざるを得ない状況下では公的部門にとり有利となるため、十分機能する手法である。一方、売上が順調に増えていく環境下では、かかる仕組みが機能し、実現するモチベーションは自治体には起こり得ない。この意味ではインセンテイブ設計が中途半端な委託行為でもあり、かかる考え方が汎用的に使えると判断することは、必ずしも適切な考えとはいえない。
運営費用を合理的にかつ、できる限り縮減する努力や売上拡大等を図ること等は、本来公的主体にとっては苦手な行為になる。包括委託の考えは、費用を管理し、収益を上げるという競技を運営する責任から自治体を開放することに繋がり、これは実質的には、公的部門の競技経営からの撤退に近い側面をもっている。もっとも民間主体にとっても、かなり制約の多い委託業務であり、費用管理や自治体の収入保証を考えた場合、必ずしも成功を約束された事業になるというわけでもなく、利益を確保するためには相当の努力を必要とするのが実態である模様だ。自治体は名目的な主催者、管理者として、利益配分のみを享受すればよく、その他の全ての費用の管理及び収益の確保は全て民間事業者に委ねることが、本来の「包括責任委託」になる。制度上の制約により、これは実現できていないのだが、自治体の固有義務が施行の公正さを担保すると主張する意見はあまりにも現実を無視した、既存の体制を守りたいとする守旧派の意見でしかない。自治体の固有義務を法律上定義する必要性は最早存在せず、これを、公正さを担保する合理的な規律に代替させ、本来の包括責任委託を志向し、実現することが公営競技の効率化に資する考え方であるともいえる。
Ⅹ我が国における新たなゲーミング賭博法制(基本)
366. 公営賭博改革: ① 抜本的改革の必要性
我が国の現行公営賭博制度(特に地方公営競技)は、既に述べたように、朝鮮戦争後の不況期における地方公共団体の財政的疲弊を救済するための一つの施策でもあり、「当面の間」、かつ、特段の財政支援が必要となる地域を指定し、限定的に為されるということがその全ての前提でもあった。かつその目的も極めて限定列挙的に、「自転車輸出の振興」等当時の時代趨勢を反映する目的が規定されたが、現状では前世紀の遺物となってしまったものも含めて、制度自体は当時のまま温存されている。我が国では、一端法や制度ができてしまうと、制度の存在そのものが自己目的化し、その有効性や効果、課題を検証もせずに、現状の体制を維持してしまうことという傾向が強い。いや、現状維持というよりも、行政府による法の「運用」により、うまく管理されているという建前なのであろう。一方、時代の変遷に伴い、立法時点と現代社会とでは、背景となる環境は根本的に異なってきている。制度と現実には大きな乖離があるのだが、これを是正しようとする努力はまだ弱い。明らかに制度疲弊の状況に陥っていることが現実になる。公営競技を主催する地方公共団体の当該事業に係わる累積赤字や、持続可能性を放棄する地方自治体による競技開催権返上の動きは、小泉政権時代の特殊法人改革の動きとも重なり、平成20年に関連する公営競技法体系の改正をもたらすことになった。この結果、特に交付金を受領する国の枠組みの在り方が改革され、一部類似的な特殊法人の合併、法人格の変更(特殊法人から民間公益法人)、交付金の繰り延べや包括的な民間委託の許諾等が実施された。それなりに「改革」がなされたとはいえ、表面的に留まり、とても充分な内容とはいえなかった。この改正の効果は短時間に終わり、平成23年頃に地方公営競技の赤字問題が再度噴出するに至り、平成24年に再度制度改定が実施された。もっとも、問題の根本的解決はなされておらず、今後問題が再燃する可能性が高い。一部公営競技に至っては、あと何年継続できるか不透明という状況に至っているのが現実となる。
何を改革する必要があるのであろうか。
① 政府施策の一貫性、整合性を保持する必要性:
賭博行為は何のためにあるのか、またどの様に規制され、管理されることが適切で、社会の中で如何にバランスをとりながらこれを維持し、公益の発展に寄与することができるかということは、常に考慮されるべき政策課題である。かつ環境変化や、時の変遷に伴う社会の変化の中で、これらは変わりうることにも配慮する必要がある。もっとも規制といっても、施行を認める以上、施行者にとっての合理的なマーケッテイング等の裁量性はある程度柔軟に認めるべきなのだが、わが国の公営賭博制度は規制と裁量性のバランスがうまくとれた仕組みになっているとは言い難い。射幸心を過度に煽ることを規制することが規範としてありながら、現実にはTV,マスコミなどを通じて一部の公営競技や宝くじ等は消費を煽り、射幸心を煽る行為を実施している。実際の施行者にとっては、顧客確保のためには、経営上・運営上合理的な行動でもあるのだが、立法の趣旨から考えてみれば、明らかに政策との整合性と一貫性は無い。法で認められていれば何でも出来るではなく、本来何のために許諾され、規制の対象になっているかの趣旨を無視して、現実が別の方向へ向いてしまい、野放図な展開になっているということでもあろう。法治国家としてあるべき姿とも思えない。本来制度として、健全な賭博のあり方を認知し、この枠組みの中で柔軟にあるべき方向性を定義していくのが好ましいといえる。また、異なった省庁が共通の政策や考え、指針もなく、単なる認可権のみを行使し、規制するというバラバラな制度は、公営競技を認知し、これを健全に育成するという考えからは程遠い考えになる。例えば、賭博行為がもたらしうる賭博依存症等の社会的課題等は、公営賭博に共通する課題として、本来国としての一貫した政策のもとで担われる必要性がある。
② 小出しの改革は限界、抜本的な制度改革の必要性:
公営競技には一定の市場があり、一定の収益や経済効果があることは事実だが、市場規模自体は段階的に縮小化しており、収益規模も段階的に減少しつつある。かかる状態に至った場合には、経費の削減に努めると共に、顧客サービスの向上等による集客増・収益増を図る等の個別施設レベルでの経営努力と共に、売上げから控除される交付金のあり方や交付率等の制度的前提を再考する必要がある。全体の収益が縮小化している状況で、費用や交付金、負担額を制度的に固定するあり方は、確実に経営や運営にとり大きな負担になってしまう。施行者にとり、費用を合理的にコントロールできず、かつ収益も単純に増やすことができない状況がもしあるとしたならば、そもそも事業としては成立できない。民間に対する包括的委託も費用や収益を管理できて初めて功を奏するのだが、現状は法律上自治体が担うべき固有の事務が制度上定義され、これら費用は固定化し、身動きがとれない中途半端な状況にある。一方、なぜ特定の業務が固有の事務となるか、それが本来公益といえるのかについては充分な説明がなされているとも思えない。
③ 市場における総供給量を調整する必要性:
市場の縮小化が継続する場合、経済実態に合わせ、市場における既存の賭博種の総賭博供給量を縮小化することが好ましい。明らかに供給過剰である場合、採算性の無い施設の廃止、合掌連携、施設の統廃合等による供給量の縮減等の合理化等を考慮すべきで、例えば競馬等に関しては、JRAと地方競馬という二つの体制を再考し、合理的な範囲で一体化する等の生き残り戦略も考慮されるべき選択肢の一つとなろう。
Ⅹ我が国における新たなゲーミング賭博法制(基本)