監視に関する基本的な考え方は、カジノ施設を一定の判断基準で区分けし、不正、いかさま等の不法行為が起こりやすい施設内の区画やリスクが高いとみられる区画を特定し、これら区画を施行者の監視専門の担当職員が、場内における全てのゲームの運営や金銭取引、あるいは内部における職員の金銭取り扱い等を固定式ビデオカメラ・可動式ビデオカメラ等により中央監視室から常時監視し、ゲーム進行の映像記録や金銭取扱い映像記録を残すことにある。誰かが、どこかで頭上の監視カメラにより監視している、あるいはゲームの進行の全てが映像で記録されているという事実は犯罪を抑止する明確な効果がある。金銭を取り扱う内部職員をも監視の対象にするのは、スキミング(現金をかすみとる)のリスクを防止するためでもある。世界のカジノ施設で用いられている同様の手法は、我が国でも当然採用されるべきであろう。この場合、施行者と国の規制機関の役割分担を正確に定義する必要がある。監視・警備・場内秩序維持の一義的責任を担うのはあくまでも施行者であり、国の規制機関ではない。また規制機関が存在することにより、施行者の義務が軽減されるということもありえない。一方、規制機関の役割は、施行の全般的な監督・監視と施行者及びその職員の監視にあり、施行者の監視部門・警備部門、あるいは公安当局等と随時連携・協力し、施行者の映像データや各種データに自由にアクセスし、独自の観点から犯罪の抑止と違法行為の監視、摘発を行うことにある。
では何が法規制の対象となるべきであろうか。
① 施行者による監視施設(ビデオモニター施設)及び関連システム設置義務並びに監視義務:
基本的にはゲーム場におけるあらゆるゲームの進行を頭上に設置されたビデオカメラにより映像記録を取りながら中央監視室から監視することが原則になる。また職員の内的な職場も含めたカジノ場内外において、リスクが高いと想定される区画を定義し、リスクのレベルに応じて同様の監視をすることが義務づけられる。この為に、必要となる世界最新技術による機材・監視システムを設置し、これを維持管理・運営する義務を施行者は負うことになる(ゲームに使用するスロット・マシーンやビデオ・マシーンは、急速な技術の発展により電子機械化しており、個別機械をシステム的にリンクすることにより限りなく不正を防止する仕組みを構築することも可能になってきている。監視の目的は映像記録により行為を監視することにあるが、不正防止を補完する様々な仕組みやシステムができつつあるという事情にある)。
② 映像データの保管義務、犯罪行為等の疑いがある場合、当局への記録提出義務:
電子的に記録される全てのゲーム進行の様子は、映像記録として一定期間保管することが義務付けられる。かつまた、規制機関、公安当局等より提出要請があった場合、これを供出する義務があると共に、必要な場合、犯罪捜査の目的あるいは犯罪証拠として規制機関ないしは警察当局は映像記録を押収することができる。尚、規則として、施行者の監視チームが違法行為を確認したりした場合の報告先は、警備や現場ではなく、施行者のマネージメントと国の規制機関とすることが通例である(警備や現場と監視チームが癒着しないように、明確に報告体制を分ける組織とすることを規則賭して決めることが通例である)。
③ 規制機関による監視映像・各種データ―への自由なアクセス権:
国の規制機関は、独自に設置された端末機械から、上記施行者の監視システムへ自由にアクセスできるものとし、全ての運営データを捕捉することができる。尚、規制機関による監視の対象は、カジノ場のゲームの進行のみならず、施行者の金銭取り扱い等をも含むことになる(規制機関の職員が常駐する場合、必要とする事務所スペース、端末機材等は全て無償で施行者が提供することが基本となろう)。
監視の目的は、ゲーム進行に関する透明性を高め、公平性、安全性、健全性を確保することにある。しっかりとした監視が行われる場合、露骨な不正・いかさまは必ず露見することになるため、誰もがやろうとしなくなるという抑止力が働き、これら不法行為を限りなく無くすことができる。