2014年2月24日(月)、日本大学桜門会館において、大阪商業大学アミューズメント産業研究所主催「第3回カジノ・デベロップメント&マネジメント講座」を開催を開催いたします。当学会の谷岡会長、美原副会長も登壇予定です。詳細およびお申込みにつきましてはこちらをご覧ください。
第3回カジノ・デベロップメント&マネジメント講座のお知らせ
最新トピックス
依存学推進協議会シンポジウム「ギャンブル依存と社会的コントロール」のご案内
2014年1月24日(金)学士会館(東京)において、依存学推進協議会シンポジウム「ギャンブル依存と社会的コントロール」が開催されます。当学会の谷岡一郎会長も登壇予定です。詳細およびお申込みにつきましてはこちらをご覧ください。
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486. 新たなカジノ法制:主務省庁すら決まっていないとする反論は適切か?
一つの法律を作る場合、既存の法体系との整合性を検証し、全ての矛盾点を解決することが必要になるため、必ず専門的なチェックが必要となる。特定の省庁が主務となる閣法であっても、ちょっと複雑な法案になると内閣法制局や関連省庁との書面による質疑応答や、やり取りの類いは千の単位に上ることすらある。政府提案となる閣法の場合には、手順等も一定のルールがあって解りやすい。一方、議員立法の場合は、衆議院法制局が議員を支援し、必要な総合調整や法律間の整合性をチェックすることになるのだが、この場合でも特定の省庁が指名され、必要な根回しや関連省庁との対応を支援するという仕組みであることが多い。特定の省庁に利権や天下りの恩典が行くことを前提に、裏で国会議員と官僚組織が手を握るという構図に近い。このために、特定省庁が「汗をかく」ということになる。一定のインセンテイブを与えることを前提に、官僚組織の貢献を求めることになるのだが、官僚機構を効果的に動かす一つの手法であることは間違いない。これが我が国における立法府と行政府の過去の関係でもあった。
新たな政策を立案し、立法化への手順を着実に踏むためには、政策的に利害関係の深い特定省庁の協力を得てこれを実現することは、本来おかしな話ではないし、否定されるべきではない。但し、ことが露骨な省利省益を囲い込む法案や(例えば新たな立法措置により特別会計を設け、税ではなく交付金、納付金として、特定省庁を利する裏の予算として囲い込む等)、明らかに特定省庁のためだけの天下り組織とポストを設けるための法案等の場合には、果たして国会にて賛意が得られるかどうか、国民がこれを認めるか否かは全く別の次元の話になる。昭和20年代後半にできた公営賭博の法体系も、平成の時代にできたTotoの制度も、その実態は、国会議員と特定省庁が裏で手を握り、交付金を受け取る枠組みとしての天下り組織と、国会の議決を経ないまま官僚組織が自由に采配できる第二の予算としての交付金をかかる天下り組織が受け取る枠組みとして構成されてきた。勿論その交付金の使途は公目的であって、これら枠組みが大きな社会的貢献をしてきたという事実はある。但し、かかる「伝統的な公営賭博の枠組み」は、最早現代社会では、通用する考えとは思われない。官僚組織による「利権」と「天下り」は、本来存在してはならない社会悪であって、新たなカジノ法制をかかる前提のもとで構築することは、まずありえないことが全ての前提になる。また、議連の国会議員団にも、特定の政策省庁を指名し、そこにぶら下がる形で国の機関を設けるという考えでは、単純利権の構成になるだけで、新たなカジノ法制の構築に際しては好ましくあるまいとする意思があった。
かかる前提をとる場合、自ら火中の栗を拾いにくる省庁等はいなくなるものだ。特に、刑法上の違法性阻却を前提とする法律の場合には、関連しうる法律も省庁も多岐に亘るため、主務省庁として手を挙げることは、責任と多大な業務を抱え込むことを示唆している。利権や天下りの恩典がない限り、省庁は誰も手を挙げそうもないというのが実態なのかもしれない。歴代の法務大臣並びに法務省は、過去の国会答弁または議連に対する書面による見解書において、刑法上の違法性阻却を前提とする新たなカジノ立法に関しては、その是非に関し、行政府としてコメントする立場にはないこと、但し、立法府が新たな法律を制定する場合には、刑法を所管する省庁として応分の協力はする旨を答弁している。これが官僚組織の本音なのだろう。積極的には動けない。勿論、政治の意思があれば協力するということになる。単純な形で主務省庁を決めにくい理由がここにある。だからこそ、立法府による積極的な意思と行動が、全ての前提とならざるを得なかったという事情がある。
新たな賭博制度となるカジノ法制の場合には、明らかに様々な法律との調整が必要になるとともに、複数省庁が絡んでくる(例えば刑法を所掌する法務省、金融関連諸法を所掌する金融庁、マネーロンダリング法制に絡む警察庁、賭博依存症問題を所掌する厚生労働省等でもあり、観光振興や地域振興、文化振興等が政策目的となれば、関連しうる政策官庁も関与することになる)。かかる場合には、複数省庁の共管となることが想定されるが、当面のIR推進法案の場合には、省庁の中の省庁ともいうべき、内閣府(主務大臣は内閣総理大臣)に総合調整と実施法案の詳細設計を委ねる形をとっている。もっとも内閣府や内閣官房といっても、所詮は各省庁の寄せ集め部隊に過ぎず、この内部にシマを作り、特定の複数省庁からの派遣官僚を組織化するという手段が取られる公算が強い。公務員といっても所詮組織の一員に過ぎず、個人の能力とやる気にもよるのが、最終的には官邸による判断により、何等かの枠組みが構築されることに なるのだろう。
IR実施法案は、公的権限の強い制度的な枠組みになるために、上記コンテキストのもとで複数省庁の共管を前提に話を進めるにしても、如何なる省庁を取り込むかに関しては様々な課題もある。例えば規制の側面は、規則制定権を含めて、既存の省庁の権限には委ねず、3条委員会となるカジノ管理委員会がこれを担うことになる。形式的に内閣府の外局として制度上は構成されるため、主務大臣は内閣総理大臣である。法律の全ての主務を内閣総理大臣とし、上記3条委員会とは別に区域指定や賭博政策を担う別の組織を内閣府に設ければ、主務大臣は一貫したものになり、単純化する。これに複数省庁が共管となる体制をとることができる。一方、IR推進法案策定の過程で、議員間で議論となったのは、規制を担う主務は内閣総理大臣・カジノ管理委員会とするにしても、地域政策とか地域指定、地域振興・観光振興等の(賭博規制とは関係ない)政策的側面に関しては、別の省庁を共管とし、かかる政策的側面のみを担わせてはどうかというものでもあった。確かに、全ての権限が集中しなければならない必然性はない。かつ、できる限り多くの省庁を政策的に関与せしめることにもメリットがある。公序良俗を保持するための賭博規制と、IRがもたらすプラスの効果をどう活用するかという政策課題は所掌が分担されていてもおかしくはない。逆に、区域指定は、優れて政治的な判断をも含みうるため、規制を担う国の組織がこれを所掌することはおかしく、別の政策官庁が担うべきという議論もある。
上記が如何なる形に収斂するかは、時間の問題で決まる。政治の判断がこの方向性を決めることになるのだろう。
番外
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